素材は、
ヨシュケイ様からお借りしました。
「薄桜鬼」「火宵の月」の二次創作小説です。
作者様・出版社様・制作会社様とは関係ありません。
土方さんが両性具有です、苦手な方はご注意ください。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「何だ、子供か。」
「兄者、この童、中々の上玉ですぞ。人買いにでも売って・・」
「お待ちください、そのような・・」
従兄達の横暴な振る舞いを見かねた有匡は、咄嗟に彼らに抗議しようとしたが、彼らは有匡を殴った。
「口答えをするな!」
「そうだ、我が家に置いて貰えるだけ有難いと思え!」
従兄達は、有匡と女児をその場に残して去ってしまった・
「大丈夫か?」
「はい・・」
女児は、そう言うと真紅の瞳で有匡をじっと見つめた。
「ありがとうございます。このご恩は必ず返します。」
「そんな事はしなくてもいい。わたしは、当然の事をしただけだ。」
有匡がそう言った時、遠くから人の声が聞こえて来た。
「では、僕はこれで。」
「おい、待て!」
女児はさっと有匡に背を向けると、声が聞こえる方へと素早く走り去ってしまった。
彼女の事は、記憶の片隅に有匡が留めておいた筈―だった。
火月と再会するまでは。
「お前、あの時の・・」
「漸く、お会い出来ました・・有匡様。」
火月はそう言うと、有匡に抱きついた。
「何故、わたしの名を?」
「土御門有匡先生といえば、京では知らぬ者など居ない大陰陽師だと、噂で聞いております。」
「噂など、あてにならぬ。それよりも、そろそろ離れてくれぬか?」
「あっ、すいません・・」
有匡の言葉を聞いた火月は、顔を赤くしながらさっと有匡から離れた。
「矢傷の方は、大丈夫ですか?」
「あぁ、軽く掠った程度だ。」
有匡はそう言うと、血で汚れた衣を脱いだ。
それを見た火月は、悲鳴を上げて彼から後ずさった。
「どうした?」
「すいません、血が苦手で・・」
「そういえば、まだお前の名を聞いていなかったな?」
「火月・・炎の月と書いて、火月と申します。」
(不思議な娘だ、大抵の者は、わたしの顔を見ただけで逃げる者が多いというのに・・)
「傷の手当てをしてくれて礼を言う、火月。」
「待って、待ってください!」
「何だ?」
「あの、先生にひとつお願いが・・」
「わたしに?」
「僕、あなたの子供を産みたいんです。」
火月の爆弾発言に、有匡は暫く驚きで固まってしまった。
「それをわたしに告げて、どうしろと?」
「すいません、忘れて下さい。」
そんなやり取りを有匡と火月が東の対にある局でしていた頃、西の対にある自室で歳三は御帳台の中で何度か寝返りを打ったが、眠れなかった。
というのも、義成が敵対関係にある有匡の変装を見破り、彼を捕えようと騒ぎを起こしたからだった。
「歳三、居るか!?」
「ええ、居りますよ。何です、こんな夜中に大声をお出しになって・・」
「そこに、あの男は居るのか!?」
義成はそう言うと、御帳台の方を指した。
「さぁ、存じ上げませんよ、“あの男”の事など。それよりも、東宮様のお相手をするのは、もうお済みになられたのですか?」
「東宮様は、元高殿と共に御所へお戻りになられた。どうやら、元高殿と東宮様は気が合うらしい。」
「まぁ、それは残念でしたね。もう休みたいので、出て行って貰えませんか?」
「邪魔したな!」
御簾を乱暴に捲り上げ、義成は歳三の自室から出て行った。
(あぁ、うるさかった・・)
歳三は御帳台の中へと戻ると、今度こそ本当に眠った。
「ん・・」
有匡が目を開けると、自分の胸の上に火月が寝ていた。
「おい、起きろ。」
「すいません・・」
夜の闇に紛れて土方邸から脱出しようとしたのだが、いつの間にか有匡は眠ってしまったらしい。
「姫様、どちらにおられますか~?」
「姫様~」
衣擦れの音が渡殿の方から聞こえ、その音が徐々にこちらへと近づいて来る事に有匡は気づき、慌てて火月を己の胸の上から退かそうとした。
しかし、火月が悲鳴を上げ、体勢を崩してしまった。
「姫様、起きていらっしゃいますか・・きゃぁぁ~!」
「姫様~!」
火月付きの女房が見たのは、有匡に押し倒されている主の姿だった。
「姫様、大丈夫ですか!?この男をわたくし達と同じ牛車に乗せるなど!」
「僕は本気です。あなた達が嫌なら、先に高原家へ戻っていなさい。」
「は、はい・・」
有匡が自分達と同じ牛車に乗る事を知った火月の女房達は、咄嗟に火月に抗議したが、彼女からそんな言葉を返されて黙ってしまった。
彼らを乗せた牛車は、気まずい空気に包まれたまま土方邸から出て、高原邸に着いた。
「殿、火月様が土方家から戻られました!」
高原家当主・義高は、女房から火月が土方家から帰宅した事を知り、寝殿から出て牛車から降りて来た火月を温かく出迎えた。
「只今戻りました、父様。」
「火月よ、土方家での宴はどうであった?和琴は上手く弾けたか?」
「はい。父様、姉様は?」
「茜なら、昨日から自分の部屋に引き籠もっておる。まったく、あいつはいつまでも拗ねておるのやら。」
義高はそう言った後、東の対の屋の方をちらりと見た。
そこには、彼の正室の娘・茜が住んでいた。
茜は美貌と知性を兼ね備えた高原家の一の姫なのだが、性格のきつさが災いし、義高から蔑ろにされていた。
火月の母は義高の側室であったが、火月が三歳の頃に亡くなり、彼女の母の忘れ形見である火月を、義高は溺愛していた。
「火月よ、その女は見ぬ顔だな?」
「土方家で、賊に襲われて僕達の局に逃げ込んで来たのです。何やら訳ありなので、我が家で匿う事に致しました。」
「そうか・・」
「火月、帰っていたのね。」
「は、義母上・・」
火月の顔が、一人の女―義高の正室・倫子を見た途端に強張ったのを有匡は見逃さなかった。
「そちらの方は?」
ジロリと蛇のような冷たい目で倫子に睨みつけられ、有匡は咄嗟に顔を絹の袖口で隠した。
「火月が土方家で匿った訳有りの女らしい。」
「まぁ、そなた、名は?」
「義母上、この方は賊に襲われたショックで声が出ないようなんですの。」
「まぁ、そうなの。殿、このような素性がわからぬ女をこの家に入れるなど・・」
「僕付きの女房に致します。決して、義母上や姉様にはご迷惑をお掛けしません。」
「そう。ならばいいわ。」
こうして、有匡は高原家で火月付きの女房として暮らす事になった。
一方、土御門家では有匡が失踪し、彼の伯父はショックの余り床に臥せってしまった。
「父上には困ったものだ。実子である我らよりも、従弟である有匡ばかり可愛がって・・」
「狐の子の癖に、お情けでこの家に置いてやっているというのに・・」
有匡の従兄達は、今日も彼の悪口に華を咲かせながら囲碁を打っていた。
「爽子様、有子様が行方知れずになってもう七日も経ちましたわね。」
「有子様は、無事なのかしら?」
「有子様なら大丈夫よ、無事に帰って来るでしょう。」
爽子は飄々とした口調でそう言うと、檜扇で顔を扇いだ。
そんな中、火月に縁談が来た。
「相手は、三条高人様ですよ。何でも、あの光源氏のような方だとか。」
「その縁談、断っちゃ駄目?」
「まぁ、何故断るのです?」
「だって、僕には既に、心に決めた方がいらっしゃるもの。」
「火月、火月は居るのか!?」
「どうかなさったのですか、父様?そんなに大声を出されて・・」
「喜べ、お前の入内が決まったぞ!」
「え・・」
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