「馬鹿を言うな、千!ネズミなど飼える訳がないだろう!」
「それはやってみないとわからないでしょう?」
千はそう言うと、自分の腕の中で暴れているネズミの頭を撫でた。
するとネズミはウトウトし始め、瞬く間に千の腕の中で熟睡した。
「米を食べようとしただけで動物に手をかけようとするなど、貴方達は本当に武士ですか?」
「何だと!?」
「武士ならば多少の事で全く動じぬというのが武士というものです。そんな事すらわからぬとは、嘆かわしい。」
千尋がそう言って千を馬鹿にした隊士達をにらみつけると、彼らの間に険悪な空気が流れた。
「おいてめぇら、朝っぱらから何していやがる!?」
「副長、おはようございます。朝からこの二人がつまらぬことをしようとしていたので、わたくしが止めただけの事です。」
「つまらねぇ事?」
「えぇ、米を食べようとしたネズミを彼らが殺そうとしたのです。」
歳三の視線が、隊士達から千が抱いているネズミの方へと移った。
「無駄な殺生はするな。」
「は、はい!」
「千、俺の部屋に来い。」
「わかりました。」
千が歳三と共に副長室に入ると、中は火鉢が置いてあるお陰で厨房よりも暖かった。
「ここなら、あいつらは簡単に手出しできねぇだろう。」
「は、はい・・」
「お前ぇがそのネズミを飼う事については何も言わねぇ。ただ生き物を飼う以上、最後まで責任を持って世話しろ、わかったな?」
「はい、わかりました!」
「それじゃぁもうお前は仕事に戻れ。」
「あの、土方さん、もうひとつ話したいことが・・」
「もうネズミの話は済んだだろう?まだ何かほかにあるのか?」
「実は・・」
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