※BGMと共にお楽しみください。
「薔薇王の葬列」二次創作小説です。
作者様・出版者様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「・・恐れながら申し上げます、王妃様。この者は魔物です!この者を王室に入れるなど、この国に災厄を齎しますぞ!」
「其方、昭媛に対する無礼な物言いは、わたくしを侮辱することになるのですよ?」
「も、申し訳ございませぬ王妃様!」
マーガレットの剣幕に怯んだセシリーは、それ以上リチャードを侮辱する事はせず、そのまま彼女の部屋から辞した。
「王妃様、わたくしはあの女を一度も母だと思ったことはありませぬ。」
「そうか、ならばわたくしが其方の母となろう。リチャード、わたくしは其方の事を高く買っている故、わたくしの期待を裏切るような事はしないでおくれ。」
「はい、王妃様。」
王妃の部屋から辞したリチャードは、後宮内にある自分の宮へと戻った。
そこは妓楼に住んでいた頃に自分が使っていた部屋とは余り変わらなかったが、唯一変わった事といえば、部屋の外に数人の女官達が控えている事だけだった。
「昭媛様、お召し替えをなされませ。」
「暫く一人にさせてくれ。」
女官達が居なくなり、リチャードは漸く部屋で寛ぐことができた。
妓楼で暮らしていた頃、リチャードの傍には常に多くの人間が居て騒がしかったので、こんなに静まり返った部屋の中で過ごすのは少し心細かった。
「ケイツビー。」
いつもの癖でケイツビーを呼ぼうとしたリチャードだったが、ケイツビーはもう自分の傍に居ない事に気づいた。
壁に立てかけてある玄琴(コムンゴ)を手に取ったリチャードは、静かにそれを爪弾き始めた。
「それにしても、妓生だった者を側室に迎えるなんて、王様はかなりの変人だこと。」
「それは言い過ぎでしょう、義姉上(あねうえ)。そのような事が王妃様の耳に入れば、我ら一族は無傷では済みませんよ。」
「まぁバッキンガム、お前はいちいち大袈裟ね。ねぇ、今日のわたくしの装いはどうかしら?」
「とても素敵ですよ。」
義姉・エリザベスの華やかな姿を見て、バッキンガムはそんな月並みの誉め言葉しか彼女に送れなかった。
「一度、王宮に住めたのならどんなにいいと思ったわ。でもわたくしはエドワード様の妻となる身。その願いは、妹に叶えて貰うしかなさそうね。」
エリザベスの妹・キャサリンは、エドワードの口添えで水刺間(スラッカン)の女官として王宮入りしていた。
いつか妹が王の目に留まり、彼女が王の側室となり男児を儲け、一族が繁栄することこそが、エリザベス達ウッドウィル一族の野望であった。
今日エリザベスが義弟・バッキンガムと共に王宮を訪ねたのは、病に伏せたキャサリンを見舞う事と、王の新しい側室の顔を見る為だった。
「姉様、わざわざいらしていただかなくても宜しかったのに。」
「キャサリン、慣れない王宮での生活は疲れが溜まる事でしょう。お前の好きな菓子を作らせたから、これを食べて元気におなりなさい。」
「まぁ嬉しい。ありがとう、姉様。」
バッキンガムは久しぶりに会う姉妹の時間を奪ってはいけないと思い、バッキンガムは二人が居る部屋から出て、広い王宮内を散策した。
エリザベス達が居る部屋へと戻ろうとした時、バッキンガムは風に乗って聞こえる玄琴の音色にまるで誘き寄せられるかのように、後宮の中へと迷い込んだ。
半分開けられた扉の中から、バッキンガムは艶やかな黒髪を揺らしながら玄琴を奏でている一人の美しい女の姿に見惚れてしまった。
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