※BGMと共にお楽しみください。
「進撃の巨人」の二次創作小説です。
作者様・出版者様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。
「お前が、わたくしの兄上を殺した・・」
美禰はそう言うと、懐剣を鞘から抜いた。
「わたくしから大切な兄を奪い、その上愛する者まで奪おうというの!?」
(この女、何故俺が“黒猫”だと知っているんだ?)
誰にも己の正体を悟られぬよう、仕事は抜かりなくやってきたつもりだった。
リヴァイの脳裏に突然、自分の正体を知っている男の顔が浮かんだ。
まさか、あの男が美禰に自分の正体を話したのだろうか?
そんな事を考えていたリヴァイは、金切り声を上げながら自分の方へと突進してくる美禰の姿に気づき、身を躱(かわ)そうとしたが、間に合わなかった。
「死ねぇ!」
「やめろ、美禰!」
突然リヴァイの視界に鮮やかな金が飛び込んで来たかと思うと、エルヴィンが自分と美禰の間に割って入り、彼女が振り翳した刃をその大きな掌で受け止めていた。
「エルヴィン・・」
「エルヴィン様、何故わたくしの仇討ちを止めるのですか!?」
「そんな事をしても、吉之助は帰って来ない。」
エルヴィンの言葉を聞いた美禰は、彼の胸に顔を埋めて激しく嗚咽した。
その姿を見たリヴァイは、胸が痛んだ。
「待ちなさい!」
彼がエルヴィン達に背を向けて立ち去ろうとした時、美禰が般若のような形相を浮かべながらリヴァイを呼び止めた。
「わたくしは決してお前を許さない!わたくしの兄を殺した罪、お前の命で贖(あがな)うがいい!」
「・・そうか。俺は許されようなんてこれっぽっちも思っちゃいねぇ。大義の為とか言いながら、俺がやっているのは所詮ただの人殺しだからな。」
「リヴァイ、わたしは・・」
「エルヴィン、もう俺には構うな。俺とお前とは生きる世界が違う。」
「リヴァイ、待ってくれ!」
背後から聞こえてくるエルヴィンの声を振り払うかのように、リヴァイは闇の中へと消えた。
「お帰り、リヴァイ。今までどこに行っていたの?」
「少し人に会って来た。」
リヴァイの顔色が少し悪い事に気づいたハンジは、おもむろに彼の額に手をあてた。
「ちょっと熱があるね。」
「そんなの、寝ていれば治る。」
リヴァイはそう言った後、自室に入って布団も敷かずに眠った。
“リヴァイ、愛しているよ・・”
夢の中でリヴァイは、エルヴィンに抱かれていた。
彼の肌の温もりは、夢の中であってもやけに生々しかった。
朝を迎え夢から醒めた時、リヴァイは何故か大粒の涙を流していた。
1864(元治元)年、四月。
京の街から冬の気配がなくなり、所々に満開の桜を見かけるようになった。
冬から春への季節の変わり目に、リヴァイは良く体調を崩した。
今年も、リヴァイは三ヶ月前にひいた風邪がなかなか治らず、床に臥せていた。
「リヴァイさん、お粥が出来ました。」
「いつも済まねぇな、エレン。」
「いいえ、ちゃんと食べて栄養をつけてくださいね。」
エレンはそう言うと、一口大の粥が入った匙をリヴァイの口元へと持っていった。
「馬鹿野郎、粥くらい一人で食べられる。」
「そうですか・・じゃぁ何かあったら呼んで下さいね!」
「わかったから、早く出て行け。」
エレンが去った後、リヴァイは溜息を吐きながら用意された粥を全て平らげた。
一方、エルヴィンは美禰と共に花見をしに、産寧坂へと来ていた。
「美しい桜ですね。何だか心が洗われるようです。」
「あぁ、そうだな・・」
エルヴィンは視線の端に、紅い簪を挿した黒髪の芸妓の姿が映り慌てて駆け寄ったが、それはリヴァイではなかった。
(わたしはまだ、リヴァイの事を・・)
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