1867(慶応3)年12月16日。
「今日も寒いですね。」
「ああ。」
この時代に来てから、千は何度も京の冬を経験したが、この骨まで凍えるような寒さは未だに慣れなかった。
「近藤さんはどちらに?」
「局長なら、二条城で会議に出席している。そろそろこちらへ戻ってくると思うが・・」
斎藤がそう言った時、急に外が慌しくなった。
「おい、一体何があった!?」
「大変です、近藤局長が何者かに狙撃されました!」
「何だと!?局長は無事なのか!?」
「今、山崎さんが治療していますが、危険な状態です・・」
隊士から報告を受け、千と斎藤が医務室に入ると、そこは血の臭いに満ちていた。
「山崎さん、近藤さんは・・」
「弾は右肩を貫通しとる。これからその弾を取り出すさかい、お前はしっかり局長を押さえとけ!」
「待って下さい、麻酔は!?」
「そんなもん、ある訳ないやろ!」
「わかりました・・」
千は苦しそうに呻く近藤の顔を見て一瞬躊躇(ためら)ったが、山崎に睨まれたので、慌てて彼の身体を押さえた。
「山崎君、やってくれ・・」
「わかりました。」
山崎が近藤の右肩の傷口を焼灼(しょうしゃく)すると、近藤は手負いの獣のような唸り声を上げた。
「近藤さん、後少し終わりますから・・」
「終わりましたよ、局長。」
「そうか・・」
近藤はそう言うと、静かに目を閉じた。
「近藤さんの様子はどうですか?」
「落ち着いている。それにしても、一体誰が近藤さんを・・」
「多分、御陵衛士の残党かと。」
「後は俺が近藤さんを看るから、お前はもう休め。」
「わかりました・・」
千が自室に入ると、隅で休んでいた福が自分の方へと駆け寄って来たので、彼は福におやつをあげた。
「福、まだ元気で居てね・・」
千がそう言って福を撫でると、彼はゴロンと仰向けになり、そのまま眠ってしまった。
近藤は治療のため大坂へ移送される事となり、肺結核が悪化した総司も大坂へ移送される事となった。
「千君、どうかお元気で・・」
「沖田さんも。」
近藤不在のまま新年を迎えた新選組の元に、思いもよらぬ知らせが届いた。
この作品の目次は
コチラです。
にほんブログ村