画像は
コチラからお借りいたしました。
「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。
作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「これは、スウリヤ・・わたしの母上の、ロザリオだ。」
「ということは、お前ぇはキリシタンか?」
「いや、キリシタンは母だ。母は、わたしが幼い頃姿を消した」
有匡は歳三達に、上洛した後の事や江戸に居た頃のことを話した。
「そうか・・」
「土御門家といえば、攘夷派の公家でしょう。もしかして君、長州の間者だったりして。」
「滅多な事を言うな、総司。」
「訳ありのようですね?」
「母は、実の父親から命を狙われて、わたし達の前から姿を消したと、母の友人から聞いた。」
「そうか。」
「土御門家は、わたしが生きて江戸へ戻る事は困るらしい。」
「だから、君に深手を負わせた、という事ですね。」
そう言った山南敬助の眼鏡が、キラリと光った。
「すいません、どなたかおりませぬか~!」
屯所の門の近くから、少年特有の甲高い声が聞こえて来た。
「俺が行きましょう。」
「悪いな、斎藤。」
「いいえ。」
斎藤が屯所の門へと向かうと、そこには旅姿の少年が立っていた。
「ここへは何の用だ?」
「こちらに、土御門有匡様はいらっしゃいますか?いらっしゃったら、この文を必ず渡して下さい。」
そう言って少年は、付け文を斎藤に手渡した。
「わかった、必ず渡そう。」
斎藤は少年から付け文を受け取ると、副長室へと戻った。
「渡したか?」
「はい、確かに。」
「そうか。これは路銀代わりに取っておけ。」
「わかりました。」
男から金を受け取り、少年は歩き始めた。
「副長。」
「斎藤、それは?」
「土御門殿にこの文を渡すようにと・・」
「そうか。文を渡した奴の顔は見たか?」
「いえ、笠を深く被っていたのでわかりませんでした。」
「そうか、下がっていい。」
「はい。」
斎藤から付け文を受け取った有匡は、火月が自分を探しに京へと旅立ったと、父からの文で知った。
「どうした?」
「申し訳ないが、わたしは当分江戸には戻らず、暫くここに滞在しようと思う。」
「何故だ?」
「妻が、どうやらわたしを探しに京へ向かったと、父からの文で・・」
「そうか、で、その女房の名は?」
「火月。炎の月という意味だ。金髪紅眼で、年は17。」
「随分と若い奥さんだね。君いくつ?」
「28だが?」
「え、土方さんと同い年なの!?」
総司はそう言うと、有匡と歳三の顔を交互に見た。
新選組屯所で有匡が歳三達とそんな話をしている頃、火月は京に着いたものの、有仁から渡されていた路銀をすられてしまい、路頭に迷っていた。
「どないしたん?」
「あの、申し訳ないのですが、こちらで働かせていただけないでしょうか?宿代の分まで、働きますから。」
「そうか。あんた、見たところええところの家の娘さんやけど、女中の仕事はあんたが思っているよりもきついで。」
「大丈夫です、覚悟しています。」
「そうか。ほな、明日から頼むわ。」
「はい!」
こうして、火月は三条小橋にある旅籠「池田屋」で女中として働く事になった。
女中の仕事は火月が想像していたよりもきつくて大変だったが、江戸に居た頃女中達と共に家事などをしていたので、すぐに慣れた。
「あんた、何処から来たん?」
「江戸からです。主人を探しに。」
「そうなん?あんたの髪、綺麗な色やねぇ。」
「そうですか?」
「肌も雪のように白くて綺麗やし、うらやましいわぁ。」
「まぁ・・」
「火月ちゃん、これ明日の朝までに縫うといてな。」
「はい、わかりました。」
火月はそう言うと、女将から言いつけられ、大量の針仕事をこなした。
(有匡様、今何処に居るのかなぁ?)
「女将さん、縫い物終わりました。」
「そうか、ご苦労さん。立て続けで悪いけど、これを絹屋へ届けてんか。」
「わかりました。」
「途中で寄り道なんかしたら許しまへんで。」
「はい。」
「おい菊、お前あの子に厳しないか?」
「何言うてますの。あの子はうちの客やない、うちの女中だす。」
池田屋の女将・菊は、そう言うと帳簿を見た。
「すいません、池田屋から参りました。」
「わざわざ三条まで、来て貰うておおきに。これ、駄賃代わりとしてどうぞ。」
「ありがとうございます。」
絹屋の女主人・玲から受け取った金平糖が入った袋の中から火月は金色の金平糖を取り出すと、それを噛んだ。
甘い味が口の中に広がり、火月が思わず笑みを浮かべていると、彼女は一人の男とぶつかった。
「すいません・・」
「お嬢さん、怪我は無いかえ?」
そう言って火月に手を差し伸べた男は、不思議な瞳の色をしており、右目の下に泣き黒子があった。
「おまん、綺麗な瞳をしちゅうの?」
「すいません、急いでいますので!」
火月は慌てて男に頭を下げると、池田屋へと足早に戻っていった。
にほんブログ村