素材は
コチラからお借りしました。
「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「どうしたの、八郎?余り食べていないじゃない?」
「うん・・ちょっと疲れてて・・」
「受験が終わったから、疲れるのは当然よね。それにしても、八郎ちゃんは凄いわよね。一発合格なんて。」
「ありがとうございます、お義母様。」
姑から八郎の事を褒められ、和子は頬を紅く染めながら彼女に礼を言った。
「和子さんに、八郎ちゃんは似たのね。同じ血を分けた兄弟なのに、どうしてこうも頭の出来が違うのかしら?」
「母さんっ!」
「あら、ごめんなさいねぇ、折角のお祝いの席でこんな事を言うのは駄目よねぇ?」
「・・大丈夫です、わたしは気にしていませんから。」
そう言った和子が、ナプキンを強く握り締めている事に、八郎は気づいた。
「八郎ちゃん、もうお友達は出来たの?」
「はい。」
「まぁ、どんな子かしら?」
「トシちゃんはね、凄く賢くて強いんだ!」
「一度わたしも会ってみたいものだわ。今度その子をうちに連れて来なさい。わたしがクッキーを焼いてあげるわ。」
「わ~、やった~!」
「お義母様・・」
「さぁ、今夜はもう遅いから寝なさい。」
「は~い。」
八郎がそう言って自室へ向かうのを見送った後、和子は姑に、“トシちゃん”の事を話した。
「まぁ、土方さんのところの子なのね。だったら、八郎ちゃんの友達としては大丈夫ね。」
姑はそう言うと、もう下がるよう和子に命じた。
「和ちゃん、起きてる?」
「何だよ、うるせぇな。」
和子が和貴の部屋のドアをノックすると、中から不機嫌な表情を浮かべた和貴が出て来た。
「あのね、今週末うちでホームパーティーをする事になったの、だから・・」
「俺はいい。」
「でも・・」
「あの人達は、俺の事を“伊庭家の恥”だと思ってんだろ?お受験で失敗した出来損ないだって。」
「和貴・・」
「俺の事は放っておいてくれよ!」
和子の目の前で、和貴は乱暴にドアを閉めた。
「和子さん、何をしているの?早くお部屋にお戻りなさい。」
「はい・・」
和子はやり切れない思いで和貴の部屋の前から去った。
「トシちゃん、今週末伊庭さんの所でホームパーティーをするから、その日は空けておきなさいね!」
「わかった!」
「あ~もう、お風呂入った後はすぐに濡れた髪を乾かしなさいって言ったでしょう!」
「わかったよ~。」
「ドライヤー、そんなに当てないの!綺麗な髪が焦げちゃうでしょう!」
「うるさいなぁ、わかってるって!」
「トシさん、おはよう!」
「おはよう。」
「どうしたの、その髪?少し耳の辺りがはねているよ?」
「昨夜、ドライヤーで髪を乾かすのを忘れたらこうなった。」
「僕が直してあげるよ!」
「悪い、頼む。」
「任せて!」
八郎は歳三の髪を櫛で梳きながら、昔の事を思い出していた。
あれは、蝦夷共和国を樹立して間もない頃の事だった。
『トシさん、その髪・・』
『あぁ、ちょっとな。』
京に居た頃は腰下までの長さがあった歳三の髪は、洋装に合わせて短くなっていた。
『どうした?』
『何だか、綺麗な髪なのに勿体無いなぁって・・』
『うるせぇな。』
そう言った歳三の顔は、何処か照れているように見えた。
「終わったよ。」
「ありがとう。それにしても長い髪はうっとうしいったらありゃしねぇ。」
「僕は好きだよ、トシさんの髪。触ると心地良いんだもの。」
「そうか?」
「お前ら、本当に仲良いよな~」
「付き合っているのかよ~?」
「そうだよ~」
同じクラスの男子からそうからかわれ、八郎はとっさにそう言って歳三に抱きついた。
「おい、離れろって。」
「嫌だよ~。」
(こうして、トシさんを独り占めできるなんて嬉しいなぁ・・)
「トシさん、一緒に帰ろう!」
「悪ぃ、俺今日剣道教室があるから。」
「そう・・」
「じゃぁ、また明日な!」
校門の前で歳三と別れた八郎は、彼が乗った車が次第に学校から遠ざかってゆくのを、雨の中静かに見送った。
「勝っちゃん、久しぶりだな!」
「あぁ、久しぶりだな、トシ!」
二週間振りに勇と剣道教室で会った歳三は、喜びを爆発させるかのように彼に抱きついた。
「苦しい。」
「済まねぇ、嬉しくて、つい・・」
「そういう所は、昔から変わってないな。」
勇はそう言って歳三に向かって屈託の無い笑みを浮かべた。
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