「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
土方さんが両性具有です、苦手な方はご注意ください。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
キルシャの奇襲を受けた異教徒達の集落は、跡形もなく焼かれ、家を失った彼らは、安息の地を求め流浪の旅に出た。
「巫女姫様、いかがでございますか?」
「気持ちが良いな。」
「それはようございました。」
歳三がジャスミンの精油入りの風呂に入っていると、遠くから何か光っている事に気づいた。
「何か光ってねぇか?」
「そうですか?わたしには何も・・」
男がそう言った時、彼の首は鮮血を噴き上げながら胴体から離れた。
「巫女姫様、こちらへ!」
歳三は女官達に連れられ、自室へと避難した。
「お怪我はありませんか?」
「あぁ。」
「それにしても、あの光は一体何だったのでしょう?」
「さぁな。」
歳三は疲労の所為で、そのまま寝台に横たわり、朝まで熟睡した。
「歳三、歳三は居るか!?」
「何だ、うるせぇな。どうしたんだ、千景?」
「あの女が、お前に会いたいそうだ。」
「あの女?」
「キルシャの側近だ。」
「何でその女が、俺に会いに来るんだ?」
「さぁな。」
歳三が寝室から出ると、応接間のソファには、一人の女が寛いだ様子で座っていた。
「そなたが、あの巫女姫か?」
「誰だてめぇ?」
「妾はキルシャの側近・アーリアと申す。」
「へぇ・・キルシャ様と一緒に異教徒狩りへ行かなくていいのか?」
「妾はキルシャ様の側近だが、考え方はあの方とは違う。一緒にしないでくれ。」
「済まねぇ・・」
「最近のキルシャ様の行動は、目に余る。いくら異教徒に奴隷として売り飛ばされたからってあのような・・」
「それ、本当か?」
「キルシャ様は七つの時に、家族を殺され一人だけ生き残ったのだ。」
「そんな過去が・・」
「キルシャ様は、苛烈な御方だ。あの方の内に秘めた怒りの炎は、誰にも鎮める事は出来ぬ。」
「そんな事を俺に話しに来たのか?」
「いいや。そなたが左肩に龍の刺青があるラーラという娘、先程近くの川で彼女の遺体が見つかった。」
「それは本当なのか!?」
「妾の部下と、妾が確認したから間違いない。」
「一体、何故・・」
「ラーラの死の真相は、妾が究明してみせる故、そなたにも協力して貰いたいのだ、巫女姫よ。」
「わかった。」
「エミヤ様も陛下もお亡くなりになられた今、この国に大きな嵐が来そうだ。」
「嵐、ねぇ・・」
アーリアが言った、その“嵐”は、すぐにやって来た。
「カラシャ様、いけません!」
「カラシャ様!」
(なんだ?)
歳三が昼寝をしていると、外が急に騒がしくなった。
「申し訳ありません、巫女姫様!カラシャ様が・・」
「カラシャ様、帰りますよ。」
「いや~」
そう言いながら歳三にしがみついて離れようとしないのは、五歳位の女児だった。
彼女の名はカラシャ、千景にとっては遠縁の従妹にあたる。
「こいつの母親は何処だ?」
「カラシャ様の母君は、今療養中でして・・」
「療養中・・」
「ここは、“色々と”ありますから。」
「キルシャ様が戻られる前に、早くカラシャ様をお部屋へお連れ致しませんと・・」
「俺でよければ、この子を見てやろうか?」
「まぁ、いいのですか?」
「俺には、この子と同じ年頃の娘が居たんだ。」
「それなら、カラシャ様の事をよろしくお願い致します。」
「あなたが、みこひめさま?」
「そうだが・・」
「みこひめさま、かあさまのびょうきを治して下さい。」
「お前の母様は、どんな病気なんだ?」
「かあさま、いじわるな人にいじめられて、こころがこわれたの。」
「・・済まねぇが、俺は人の病気を治す力はねぇんだ。」
「そうなの・・」
「お前ぇの母様が元気になるまで、俺がお前ぇの傍に居てやる。」
「本当!?」
「あぁ。」
お互いに初対面だというのに、歳三とカラシャはすぐに打ち解けた。
「ねぇ、みこひめさまには、かあさまはいるの?」
「う~ん、そうだな・・」
―歳三、あなたを置いて逝くのは、とても辛いけれど、わたしはあなたの事を見守っているからね。
自分は、母親の顔を知らない。
「俺は、母親を知らない。」
「そうなの?」
「あぁ。」
「ねぇ、こんど、わたしの部屋に遊びに来て。」
「わかった。」
「約束よ。」
「あぁ。」
カラシャと自室の前で別れた歳三は、彼女の遠ざかる小さな背中に、亡くなった娘の姿を重ねていた。
(ララ、会いたい・・)
「そなたが、巫女姫か?」
「誰だてめぇ?」
歳三は突然目の前に現れた黒衣の男を睨みつけた。
「そなたに話がある、ついて来い。」
男は、有無を言わさず歳三の腕を掴むと、闇の中へと駆けだしていった。
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