「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
土方さんが両性具有です、苦手な方はご注意ください。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「てめぇ、何者だ!?」
「それは後で話す。」
男は歳三の腕を掴んだまま、歳三をある場所へと連れて行った。
そこは、タハルークから少し離れた寂れた神殿だった。
「ここに俺を連れて来て、どうするつもりだ?」
「お前には、“ある儀式”をして貰いたいのだ。」
「“ある儀式”だと?」
「あぁ、そうだ。」
男がそう言うと、指笛を吹いた。
すると、神殿の奥から数人の男女が出て来た。
皆、肩に龍の刺青を入れていた。
「我らはエリシャの民・・あの魔女が異教徒と呼んだエルシャハ神を奉る“選ばれし民”だ。」
「それが、俺と何の関係がある?」
「そなたは、神羅国の出身だそうだな?」
「あぁ。」
「そなたの娘が、何故死んだのか知りたくはないか?」
「ララは、盗賊に殺された筈・・」
「それが、仕組まれたものだとしたら?」
「何だと・・」
「キルシャは、そなたを前から狙っていた。そなたに秘められた力がある事を知った彼女は、そなたの娘を手に掛けたのだ。」
「そんな・・」
「娘に会いたくないか?」
「それは・・」
会いたくないと言ったら嘘になる。
腹を痛めて産み、慈しんで育てた娘の死の真相が知りたかった。
だが、真実は残酷なものだ。
知りたくない事は知らなくていい―そう思った歳三は、男の問いに首を横に振った。
「そうか。ならば、仕方がない。」
「エルク様・・」
「“反魂の儀式”は中止だ。」
「しかし・・」
「死者の眠りを妨げてはならぬ。」
男―エルクは、そう言うと歳三に向かって頭を下げた。
「巫女姫様、王宮までお送りしよう。」
「あぁ、頼む・・」
王宮へと向かった歳三は、そのまま自室に入って朝まで眠った。
「巫女姫様、起きて下さいませ。」
「ん・・」
「今日は、朝から予定が詰まっておりますよ。」
「わかった・・」
歳三は朝から忙殺され、少し疲れていた。
「あ~、疲れた。」
「巫女姫様、巫女姫様にお会いしたいという方が・・」
「後にしてくれ。」
「わかりました。」
「申し訳ありませんが、巫女姫様は只今お休み中です。」
「そうか、では出直そう。」
歳三に会いに来た男は、そう言うと王宮を後にした。
「噂の“巫女姫”様とやらには会えたのかい?」
「会えなかったよ。」
「まぁ、あたしらのような身分の者は簡単にお会いできないって事だね。」
「そうだな。」
「それにしても、これからこの国はどうなるんでしょう?」
「さぁな。」
「さ、仕事、仕事!」
歓楽街の中にある飯屋“パライソ”は、その夜も賑わっていた。
「三番テーブル、空いたよ~!」
「はいよ~!」
店にその客が来たのは、そろそろ店じまいをしようという時だった。
「いらっしゃいませ~」
その客は目深にフードを被っており、食事の最中もそれを外そうとしなかった。
彼は、誰かを待っているようで、時折入口の方を見てはワインを飲んでいた。
「あの客、変だねぇ。」
「あぁ・・」
「それよりも、もうハーブが少ししか残っていないわね。」
「俺が買って来るよ。」
“パライソ”の店主、ユージーンは店から出て、いつも行くハーブ専門店へと向かった。
「はいよ。」
「良かった、まだ店が開いていて。」
「この時間帯だと、店が混んで来る時間帯だからねぇ。気を付けて帰りなよ。」
「あぁ。」
ハーブ専門店を出て、“パライソ”へと戻ったユージーンは、あの客が居ない事に気づいた。
「あの変な客、何処に行った?」
「さっき帰ったよ。」
「そうか。」
「一体、何だったんだろうね?まぁ、金払いは良かったけど。」
「さてと、もう店じまいするか。」
「そうだね。」
ユージーン達は、そう言うとあの客の事を忘れた。
「ねぇ、あの人、来ないわねぇ。」
「ああ、あの金髪の・・」
「良い男だったわ。金払いも良かったし。」
歓楽街の向こうにある色街では、女達が千景の事を話していた。
「でも、あの人以前何処かで見たような気がするわね。」
「え、本当?」
「う~ん、何処だったかしら・・」
「ちょっと、あんな良い男と何処で会ったのか、早く思い出しなさいよ!」
「あ、思い出した!昔、王宮で働いていた時に、あの方を見たわ!」
「王宮?」
「そう。じゃぁ、あの人はまさか・・」
「へくしょん!」
「風邪ですか?」
「いや・・」
「また、誰かがあなたの悪い噂を流しているのでしょうね。」
「天霧、お前は俺に嫌味を言いに来たのか?」
「いいえ。エリシャの民が、密かに動き出したようです。」
「キルシャの命を狙っているのか?」
「彼らには、別の目的があるようです。」
「そうか・・」
「暫く、部下に様子を探らせてみます。」
「頼んだぞ。」
(何やら、嫌な予感がする。)
千景はそう思いながら、空に浮かぶ赤い月を眺めた。
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