「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
土方さんが両性具有です、苦手な方はご注意ください。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「来てくれたのね、ありがとう!」
「これをあなたに。」
歳三は、そう言うとカラシャに彼女が好きな花を刺繍したハンカチを贈った。
「ありがとう、大切にするね!」
「喜んで頂けたようで嬉しいです。」
「ねぇ、今日は巫女姫様の故郷の話を聞かせて!」
「わかりました・・」
ここ数日間、カラシャと歳三はまるで実の母娘のように親しくなっていった。
「まぁ、あのお二人、まるで実の親子のように仲睦まじいですわね。」
「ええ、本当に。」
「それよりも、エリシャの民の事を聞きました?」
「何でも、一部の過激派が王宮を襲撃する計画を立てているとか。」
「まぁ、恐ろしいわね・・」
「この頃、王宮付近で夜盗が出没しているようだから、気を付けないと。」
「そうですわね。」
女官達がそんな事を話していると、そこへキルシャがやって来た。
「どうした、何かあったのか?」
「いいえ、最近夜盗が王宮付近で出没しているので、戸締りに気をつけようと、皆で話していたところです。」
「そうか。それよりもカラシャは、随分巫女姫に懐いているな。」
「ええ。」
「あの子の母親は、どうしている?」
「実は、サラ様は余りご容態が芳しくないようでして・・薬師によると、あと数日の命だとか・・」
「そうか。」
キルシャが女官とそんな事を話していると、彼女達の元にサラ付きの女官が駆け寄って来た。
「キルシャ様?」
「どうした?」
「サラ様が、血を吐きました!」
「妾をサラの元まで案内せよ!」
「はい!」
キルシャ達がサラの部屋へと向かうと、彼女は苦しそうに血を吐いていた。
「すぐに薬師を呼べ!」
「キルシャ様、どうか・・娘に会わせてください。」
「わかった。」
キルシャが歳三とカラシャをサラの部屋へと向かわせると、彼女は蒼褪めた顔を娘に向けた。
「母様・・」
「何という・・」
「まだ幼いのに・・」
葬儀の後、カラシャは埋葬されるまで母の棺から離れようとしなかった。
「みこひめさま、わたしはどうすればいいの?」
「カラシャ様、わたしがあなたのお母様の代わりにおりますよ。」
「ありがとう。」
娘を亡くした母と、母を亡くした娘は、長い間共に寄り添っていた。
「巫女姫様、キルシャ様がお呼びです。」
「わかった。」
歳三がキルシャの部屋へと向かうと、そこには何かを読んでいる彼女の姿があった。
「こんな夜中に俺を呼び出して一体何の用だ?」
「実はな、そなたの娘を殺した奴らの正体が判ったのだ。」
「あいつらは、盗賊じゃないのか?」
「いや、あいつらはエリシャの民・・我が国を滅ぼそうとしている異教徒だ。」
「どうして、そんな奴らが俺を狙ったんだ?」
「そなたの手首には、美しい蓮の刺青が入れられているであろう?」
「あぁ、それがどうした?」
「そなたが狙われた理由は・・」
「キルシャ様、失礼致します!」
「どうした!?」
「カラシャ様が居られる離宮に、エリシャの民が火をつけました。」
「何だと!?」
二人が、カラシャが居る離宮へと向かうと、そこは紅蓮の炎に包まれていた。
「カラシャ様、どちらにおられますか~!」
「返事をして下さい~!」
歳三達がカラシャを探していると、歳三はサラの部屋に入り彼女の寝台に顔を埋めて泣いているカラシャの姿があった。
「カラシャ様、こちらにいらっしゃったのですね。さぁ、わたしと一緒に参りましょう。」
「うん・・でも、お母様の首飾りを探しているの。」
「どんな首飾りですか?」
「蒼い石がついた首飾り・・周りに真珠がついているの。」
「わたくしが探して参りますから、カラシャ様は先にお逃げ下さい。」
「わかったわ。」
歳三は先にカラシャを宮殿の外へと逃がし、彼女の母親の形見である首飾りを探した。
首飾りは、カラシャの寝台の近くにあった。
「巫女姫様、ご無事でしたか?」
「あぁ。」
「カラシャ様、暫く巫女姫様のお部屋を使いましょうね。」
「カラシャ様、参りましょう。」
「ええ・・」
カラシャの離宮は全焼し、暫く彼女は歳三が住まう離宮で暮らす事にした。
「カラシャ様、これを。」
「お母様の首飾りを見つけて下さってありがとう。」
「カラシャ様、これからよろしくお願い致しますね。」
「ええ!」
離宮の火事から数日経った頃、カラシャと歳三が茶を飲んでいると、そこへ見知らぬ女が数人の侍女達を連れてやって来た。
「お前が、あの巫女姫なの?」
「あなたは?」
「フン、このわたくしが誰なのか知らないの?とんだ世間知らずな女なのね!」
女はそう叫ぶと、不快そうに鼻を鳴らした。
(誰なんだ、この女?)
「アリーシャ様、こちらにおられましたか。皇太子殿下がお呼びですよ。」
「今行くわ!」
女は来た時と同じように、嵐のように去っていった。
「あの女、誰だ?」
「アリーシャ様ですわ。最近、皇太子殿下のご寵愛を受けて、随分威張っているようですわ。」
「へぇ・・」
「まぁ、あの方は金に物を言わせてこちらに入られたようなものですわ。」
「王宮内でも、色々とあるんだな。」
「ここは、伏魔殿ですからね。」
歳三が横目でカラシャの方を見ると、彼女は何処か怯えたような表情を浮かべていた。
にほんブログ村