「PEACEMAKER鐵」二次創作です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
沖田さんが両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
「嘘を吐くな。」
「嘘は吐いておりません。」
エウリケの毅然とした態度に、敵兵達は少したじろいだ。
「どうした?」
「リアン様・・」
敵兵達の中から、20代前半と思しき青年がエウリケの前に現れた。
「それが・・この女が・・」
「娘はここに居ないと言っているでしょう!」
「引き上げるぞ。」
「良いのですか?」
「あぁ・・この城を焼き払ってからな。」
エウリケの胸を剣で振り向きざまに刺し貫いたリアンは、そのまま城から去っていった。
同じ頃、歳三は総司を連れて闇に包まれた森の中を駆けていった。
(凄い、この人灯りも何もないのに・・)
「何をしていやがる、早く来い!」
「は、はい・・」
総司は言われるがまま、歳三の後をついていった。
「見ろ、城が燃えているぞ!」
「お母様・・」
「後ろを振り向くな。」
「でも・・」
「お前を自分の命と引き換えにお前を逃がした母親の想いを無駄にするな!」
「う・・」
「泣く暇があったら、動け。」
「わかったわ。」
森を抜けた二人は、賑やかな宿場町に入った。
「ここで色々と買うぞ。」
「わかったわ。」
歳三は食糧や着替えの服などを何着か町で購入し、総司を連れて宿屋に入った。
「いらっしゃい。」
「別々の部屋を頼む。」
「すいません、今夜は部屋がひとつしか空いていないんです。」
「そうか・・」
歳三は暫く考えた後、宿屋の主人に金貨が詰まった袋を手渡した。
「宿代は弾むから、食事を豪華にしてくれ。」
「承知しました!」
歳三が総司と共に部屋に入ると、総司は歳三が差し出した服を見て顔をしかめた。
「こんな物をわたしに着ろと?」
「文句を言うなら、裸でいろ。言っておくが、今まで豊かで何不自由ない生活をこれから送れると思うな。」
「わかったわ。」
「まずはその汚れたドレスを脱げ。それが済んだら、飯だ。」
「わかったわ!」
(ったく、これからどうなる事やら・・)
歳三と総司が宿屋で食事を取っていると、トーマの喪が明けた事を祝う舞踏会が王宮で開かれた。
―何だか、変な気分ね。
―えぇ、本当に。
貴婦人達がそんな事を扇子の陰で囁き合っていると、そこへトーマの妻でありアンルーシュ王国王妃であるフレイヤがやって来た。
黒絹のドレスを身に纏い、宝石類や装身具類を一切身につけていなかったが、彼女の内側からの美しさは失われていなかった。
「一体何の話をしているのかしら?」
「い、いいえ・・」
「わたくし達はこれで・・」
「未亡人というものは、辛いものだわ。同情されてばかりで、周りはわたくしを腫れ物のように扱う・・」
「王妃様・・」
「気分が優れないので、部屋に戻るわ。」
「王妃様、お待ちくださいませ!」
「王妃様!」
「女官達も大変ね、姉様の気まぐれに振り回されて・・」
「まぁ、イライザ様・・」
「相変わらずお美しいですわ。」
「ありがとう。」
フレイヤの妹・イライザは、美しくカールしたブロンドの髪を揺らした。
「姉様の事は放っておいて、わたくし達は楽しみましょう!」
「は、はい・・」
「そういえば、あの方はどちらへ?」
「リアン様は、北へ行かれました。」
「まぁ、北へ!?あそこは、魔女の国だという噂が・・そんな危険な所へ、何故?」
「それは、陛下が命じられたので・・」
「あぁ、心配だわ!」
「大丈夫ですよ。リアン様は、すぐに帰って来られますよ。」
「そうよね。リアン様はお強いもの。」
「さぁイライザ様、リアン様が戻られるまで、舞踏会を楽しみましょう!」
「えぇ!」
遠く大広間から聞こえて来る賑やかな笑い声や音楽に耳を澄ましながら、フレイヤはそっと窓のカーテンを閉めた。
(あなた、どうしてわたくしの前から居なくなってしまったの?)
フレイヤは、寝台の上に横たわると、涙を流した。
舞踏会は、夜更けまで続いた。
「それにしても、叔父様がお亡くなりになったから、これからこの国はどうなるのかしら?姉様との間には子供は居ないし・・」
「そうですわねぇ。」
「後継者は、リアン様に決まりね!」
「そうですわね。」
「暫く部屋で休むから、誰も通さないで頂戴。」
「かしこまりました。」
この王国を治めているのは、アリューシャ王家であり、代々王位を継げるのは直系の男子のみ。
トーマ亡き後、現在王家の直系男子はリアンのみ。
このまま彼が王位を継ぎ、国王となる―筈であったが、彼には王家を継ぐ為に必要な“ある物”がなかった。
それは、代々王家に伝わる魔力であった。
その魔力は、総司が持っている。
リアンが総司から魔力を奪う方法は、ただひとつ。
それは彼女を殺す事だ。
「娘はまだ見つからないのか?」
「はい。」
「草の根を分けてでも探し出せ!」
「リアン様・・」
「どうした?」
「何だ?」
「領民達は如何いたしましょう?」
「殺すな。女子供に対する暴力は絶対に許さん。」
「はい・・」
部下達を下がらせたリアンは、自分の前に現れた見知らぬ娼婦達を睨んだ。
「あら、そんなに怖い顔をなさらないで。」
「わたくし達は、あなた方の“お世話”をする為に来たのですよ。」
「失せろ、娼婦に用はない。」
「まぁ、つれないお方。」
マリアはそう言うと、リアンの前から去った。
「あの女の事を調べろ。」
「はい。」
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