「PECEMEKER鐵」二次創作です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
ピスメでオメガバースパラレルです。
α土方さん×Ω沖田さんという設定です。
オメガバースに嫌悪感を抱かれている方は閲覧しないでください。
「え?」
総司がそう言って振り向くと、そこには精悍な顔立ちをした青年の姿があった。
年の頃は自分とさほど違わない。
そして、彼は恐らく言葉遣いから見て、自分と同じ江戸の生まれだ。
「あの、あなたは・・」
「辰之進(たつのしん)様、こちらにおられたのですか!お探ししましたよ!」
甲高い声がして、店の中に色白の十代の少年が入ってきた。
「済まない榮之助(けいのすけ)、京で美味しそうな甘味を見つけてしまったから、ついフラフラとこの店に迷い込んでしまった。」
「もう、勝手に何処かへ行かないでくださいよ!奥様にわたしが叱られてしまいます!」
「はは、すまん。榮之助、どれでも好きな菓子を買ってやるから、機嫌を直してくれ。」
「もう、子ども扱いしないでください!」
そう言って頬を膨らませている少年の姿が、幼い日の自分の姿と総司は重なった。
「総司、こんな所に居やがったのか!」
「土方さん、どうしてわたしがここに居るってわかったんですか?」
「あ、ごめぇん総司、土方さんにお前がここに居るって言ったの、俺。」
暖簾から少し顔を出した新八が、申し訳なさそうな口調でそう言って総司に向かって両手を合わせた。
「なかなか屯所に帰ってこねぇから心配したんだぞ。まさかお前ぇ、俺に隠れて甘味を買おうとしていやがったな!?」
「あはは、バレちゃいました?じゃぁ、土方さんに買って貰おうかなぁ?」
「てめぇ、調子に乗るんじゃねぇ!」
歳三はそう言って眉間に皺を寄せたが、結局総司が選んだ菓子を買って帰ったのだった。
「辰之進様、どうかされたのですか?」
「いや・・もう帰ろうか榮之助、余り遅くなっては母上に叱られてしまうからな。」
去り際、青年―市原辰之進は、華奢な青年の隣に立つ黒髪の男を見つめた。
刹那、二人の視線が絡み合い、辰之進は男の瞳の奥に宿る獣の存在に気付いた。
(この男、わたしと同じ・・)
「土方さん、どうかしたんですか?」
「いや、何でもない。それよりも総司、俺に黙って勝手に何処かへ行くなよ。」
「何ですか、それ。もしかしてわたしの首に鈴でもつける気ですか?」
「それはお前の今後の態度次第だな。」
「酷い~!」
そんなことを話しながら歳三と総司が屯所から戻ると、そこへちょうど芹沢が二人の前に通りかかった。
「おや、誰かと思ったら土方君と沖田君ではないか?」
芹沢はそう言うと、土方の隣に立っている総司を見た。
「これは芹沢さん、こんな時間帯にどちらへ?」
「ちょっとした野暮用(やぼよう)だ、君達が気にすることはない。」
芹沢は口元を少し歪めて笑うと、そのまま総司と土方に背を向けて去っていった。
「野暮用って何でしょうね?」
「さぁな。また騒ぎを起こさなきゃいいが・・」
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