一方、ソンヒは歳三が父・テジュンを保護したときき、彼の祖母の家へと向かった。
『父は何処に?』
『今ヨンイルが風呂に入れてるよ。あんたの父さん、酷い生活をしてきたようだね。』
清子はそう言ってじろりとソンヒを睨んだ。
『お前はあたしのことよりも、父親の身を案ずるべきだろうが!』
『すいません・・』
『あたしに謝るな。あたしにはヨンイル達が居るが、お前の父さんにはお前だけだ。あの男は嫌なやつだが、あんたの父親であることは変わりないんだからね。』
清子は言いたい事だけ言うと、腰をさすりながら寝室から出て行った。
その時、歳三とテジュンが風呂から出てきた。
『パパ!』
『ソンヒ・・ソンヒなのか?』
テジュンはそう言ってゆっくりとソンヒに近づいていった。
『パパ、ごめんなさい!わたし、パパのことを今まで放っておいて・・すまないことをしたと思ってるわ!』
ソンヒは父親に対する申し訳なさと罪悪感で涙を流しながら、テジュンに抱きついた。
『いいんだよ、ソンヒ・・お前にはいろいろと酷いことばかり言ってきた。天罰を受けて当然なんだ、わたしは・・』
『パパぁ~!』
熱い抱擁を交わすキム父娘の姿に、歳三は安堵の表情を浮かべていた。
『ここに知り合いが食堂を出してるから、そこで働け。店の二階に空いている部屋がある。風呂やトイレ付だから、地下鉄のホームで寝るよりマシだろう。』
『ありがとうございます、感謝します。』
そう言って頭を下げるソンヒを見て、清子は照れくさそうに頭を掻いた。
『これから親子仲良く暮らすんだよ。』
ソンヒたちの姿が見えなくなると、清子は溜息を吐いて床に腰を下ろした。
『もうあいつらには手を貸さなくていいだろうね。それよりもチヒロは遅いねぇ・・』
『携帯にかけても出ないんだ。もしかして事故に巻き込まれたんじゃ・・』
歳三がそう言ったとき、机に置いていた電話がけたたましく鳴った。
『もしもし?』
『もしもし、こちらソウル市立病院です。チヒロさんのご家族ですか?』
『はい。チヒロはわたしの妻です。』
『実は、奥様が熱中症で倒れられまして・・』
数分後、歳三は娘たちと清子を連れて、千尋が搬送された病院へと向かった。
『先生、チヒロは大丈夫なんですか?』
『ええ。幸い通行人がすぐに通報してくれて、大事には至りませんでした。』
『妻に、会えますか?』
『ええ。』
一般病棟のベッドで、千尋は病院着を纏いぐったりとした様子で寝ていた。
「千尋、起きろ。」
歳三がそっと千尋の頬を叩くと、彼女はゆっくりと目を開けた。
「ごめんなさい、心配かけて・・」
「いいんだよ、お前が無事で。」
「携帯、どこかに落としちゃって・・」
「また新しいのを買えばいい。退院したら、デパートで誰か拾っている人が居るだろうから、探してみよう。」
「うん・・」
妻が無事であることにほっと胸を撫で下ろした歳三は、携帯が鳴っていることに気づき病室から出た。
かけて来た相手は、ハン=ソンジュだった。
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