「どうした?」
「いいえ、何でもありません・・」
千はそう言って死神のカードを隠そうとしたが、呆気なくそれを歳三に取り上げられてしまった。
「これは、何だ?」
「それは・・」
「薄井か?このカードを俺に送って来たのは?」
「はい・・」
「そうか。」
「このカード、どうしましょうか?捨てましょうか?」
「いや、取っておけ。後で何かに使えるだろう。」
「そうですね。」
「折角だから、占ってみたらどうや?」
「何を、ですか?」
「そうやなぁ、新選組の未来とか。」
山崎の言葉を聞いた千の顔が、少し蒼褪めた事に歳三は気づいた。
「千、俺達に秘密はなしだ、わかったな?」
「はい。」
千は歳三の言葉を聞いた後、死神のカードを握った。
(たとえどんな運命が待っていようと、僕はそれに抗ってやる!)
千はタロットカードで、新選組の未来を占った。
「どうだ?」
「この先、新選組は険しい茨の道を歩む事になるでしょう。しかし、新選組の功績は後世にまで語り継がれる事でしょう。」
「それ以上、詳しい事はわからへんのか?」
「はい。」
これ以上、詳しい事を言わないようにしろ―千はその心の声に従った。
「“険しい茨の道を歩む事になる”か・・幕臣に取り立てられたからって浮かれるなって事だな。」
「はい、そうです。土方さん、昔読んだ本には、“人生の頂点を極めた時こそ、魔物に気をつけろ”と書いてありました。」
「そうか、わかった。」
「千、こんな所に居たのか!総司が呼んでいるぞ!」
「わかりました、すぐ行きます!」
千は歳三と山崎に一礼すると、総司の部屋へと向かった。
「沖田さん、千です。」
「千君、忙しいのに呼んでしまって済まないですね。」
そう言って布団から起き上がった総司の身体は、以前よりもひとまわり小さくなっていた。
「福ちゃんとさっきまで遊んでいたんですよ。」
千が屯所の厨房で命を救った名済みは福と名付けられ、隊士達から可愛がられていた。
福は、飼い主の千よりも総司によく懐いていた。
「ねぇ千君、福ちゃんとお散歩できるようなものを作ってくれませんか?」
「リードのような物ですか?」
「えぇ。ずっと家の中に閉じ込めていたら可哀想だし、たまには福ちゃんを中庭で散歩させたいなぁって思って・・」
「わかりました、作ってみます。」
「ありがとう、千君!」
千が福のお出掛け用のリードを作っていると、廊下の方から数人分の慌しい足音が聞こえて来た。
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