画像は
コチラからお借りいたしました。
「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。
作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
一部残酷描写があります、苦手な方はご注意ください。
「わたしを、斬るつもりですか?」
「山南さん、あなたは変わりましたね。」
「人は、変わるものですよ。」
「わたしの血で良ければ、いくらでもあなたに差し上げましょう。ですが、妻は傷つけてないで下さい。」
「わかりました。」
山南はそう言うと、有匡が指先を傷つけ、それを硝子壜の中に注ぐのを黙って見ていた。
「ありがとうございます。」
「また、わたしの血が必要だと思ったら言いに来てください。」
有匡はそう言うと、山南の部屋から出た。
「有匡様、山南さんと何の話をしていたのですか?」
「男同士の話だ。それよりも、千鶴殿は?」
「彼女でしたら、庭で洗濯物を干していますよ。」
「そうか。」
有匡が中庭へと向かうと、そこには大量の洗濯物を干そうとしている千鶴の姿があった。
「手伝おう。」
「そんな・・」
「二人でやった方がいい。」
「ありがとうございます。」
「ここでの生活にはもう慣れたか?」
「いいえ・・」
「それはそうだろう。あんな目に遭った上で、男所帯に女一人に放り込まれたのだから、慣れも何もないだろう。」
「えぇ。あの、土御門様は・・」
「“様”づけはいらない。」
「じゃぁ、どうお呼びすれば・・」
「“土御門さん”でいい。」
「母を捜しに。」
「会えたのですか?」
「一瞬だが、会えたよ。今までわたしは母を憎んで来たが、彼女にも事情があると思ったら、憎しみが消えた。親が、己の分身である子を好き勝手に捨てる訳ではない。きっと君の父上も、事情があったのだろう。」
有匡がそう言って千鶴を励ましている姿を、副長室の窓から見ていた。
「トシ、雪村君の事が気になるのか?」
「いや、別に。」
「それにしても、土御門君は頼りになるなぁ。剣の腕もそうだが、隊士達の指導も上手い。」
「土御門家から連絡は?」
「ない。それにしても、土御門家が長州と繋がっているという噂は本当なのか?」
「それを今、監察方に探って貰っている。」
「そうか。」
「トシ、顔色が悪いぞ?少し働き過ぎじゃないのか?」
「大丈夫だ。」
「山南さんの怪我さえなければ、少しはトシの負担が減るんだがな。」
「そんな事を言うな。山南さんが、一番思い詰めているんだよ。」
「そうだな・・」
二人のやり取りを、山南は密かに聞いていた。
「ほぉ、面白くなって来たな。」
「あの時、山南総長を襲っておいて良かったですね。」
「狙いは土方だったが、まぁいい。」
「これからどうなさるおつもりで?」
「それはまだ話せん。」
男はそう言うと、自分の飯代だけを払って店から出て行った。
「お前の主は、お前をこき使っている癖に、ケチなのだな。」
「あ、有匡様・・」
「さて、今後の事を話そうか?」
「お許しください、わたしは・・」
「黙れ。」
有匡はそう言うと、蒼褪めている蛍を屯所まで引き摺った。
「豊川蛍、切腹を申しつける。」
「介錯はわたしが致しましょう。」
「そんな・・」
蛍は縋るような目で有匡の方を見たが、彼は冷たく蛍を見下ろすだけだった。
蛍の切腹は、翌朝早くに行われた。
有匡は蛍の切腹が終わった後、その足で土御門家へと向かった。
「貴様、一体何をしに来た!?」
「これから江戸へ発つので、あなた方に土産を渡そうと思いまして。」
「土産だと?」
茶菓子を美味そうに頬張っている匡俊の膝上に、有匡は塩漬けにした蛍の首を放り投げた。
匡俊は悲鳴を上げ、その場に居た者達は悲鳴を上げたり嘔吐したりしていた。
「あないな事をしたらあきまへんえ。」
「申し訳ありません、叔母上。」
「蛍はこちらでちゃんと弔いますさかい、もう行きなされ。」
「はい。」
福子に向かって深々と一礼した有匡は、土御門家を後にした。
「有匡、久しいな。」
「父上、ご無沙汰しております。」
「スウリヤには、会えたのか?」
「はい、一瞬でしたが。」
「そうか・・」
それ以上、有仁と有匡は言葉を交わさなかったが、それだけでも彼らの間には通じるものがあった。
「火月を京に残しておいて大丈夫なのか?」
「えぇ。」
「色々と向こうではあるだろうが、余り無理をするなよ。」
「はい。」
こうして、父子二人水入らずの時が、穏やかに過ぎていった。
「おや有匡殿、久しいですね。」
火月への土産に簪を有匡が選んでいると、そこへ一人の男がやって来た。
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