「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「ねぇ、聞いたかい?」
「女将さんが死んで、これからどうなるか・・」
「泥船に乗って沈むのはごめんだよ。」
女将・恵美の告別式から数日も経たぬ内に、経営不振の為“神無月楼”は倒産した。
「皆さん、短い間でしたがお世話になりました。」
「豊さん、元気でね。」
「あぁ・・じゃなかった、はい!」
“神無月楼”の前で従業員達と別れた歳三は、キャリーケースを引いて近くのバス停へと向かった。
「ったく、早くこのド田舎から出て行きてぇな。」
歳三がそう言いながらバス停のベンチに座っていると、そこへ匡人が運転している車が停まった。
「待たせたな。」
「わざわざ東京までご苦労さん。」
「詳しい話は車の中で聞こうか。」
歳三は東京へと向かう車の中で、匡人にダムで因縁の相手と千年振りに再会した事を話した。
「そうか。」
「あいつを八つ裂きにしてやりたかったが、あいつの澄ましたツラを傷つけてやっただけでもスカッとしたぜ。」
「そうか。」
「向こうで何か動きはあったか?」
「ない。あぁそうだ、あの男が載っている。」
匡人が歳三に渡したのは、経済誌だった。
そこには、あの男のインタビュー記事が載っていた。
「“カフェ界の寵児”、ねぇ・・」
「東京に戻ったら、色々と忙しくなりそうだな。」
「ええ。」
東京に戻った歳三は、千鶴と共に再び店を切り盛りするようになった。
「いらっしゃいませ。」
最近“華カフェ”は、桜が満開になった季節を迎え、連日ほぼ満席の状態となっていた。
「はぁ、疲れた。」
「トシさ~ん!」
「またてめぇか、八郎?」
ランチタイムが終わって一段落着いた歳三と千鶴が遅めのランチを食べていると、そこへ八郎がやって来た。
「トシさん、僕の分のランチは?」
「あなたの分のランチは、ありませんよ。」
千鶴はそう言うと、研いだばかりの柳葉包丁を八郎に向けた。
「落ち着け、千鶴!」
「びぇぇ~、トシさん!」
「夫から離れなさい、この・・」
「びぇぇ~!」
歳三は千鶴に揉みくちゃにされながらも、何とか遅めのランチを終えた。
「はいトシさん、スイーツ!」
「要らねぇよ。」
「まぁ、これは最近人気のスイーツですね。三人で仲良く頂きましょう。」
「そうだな・・」
「ねぇトシさん、最近あのカフェのオーナーが変な事をしているよ。」
「変な事?」
「最近、このクラブで“秘密”のパーティーを開いているよ。」
八郎はそう言うと、タブレットを歳三に見せた。
そこには、色とりどりの仮面をつけた男女が集まるパーティーの写真が映っていた。
「何かありそうだな・・」
「パーティーは毎週金曜日の夜十時に横浜港から出港する船で行われるそうだよ。」
「へぇ・・」
「という訳で、僕と一緒に行こう、そのパーティーに。」
「は?」
こうして、ひょんな事から歳三は八郎と共に横浜港へと向かった。
「寒い。」
「まぁ、春先だからね。」
「八郎、そのパーティーにあいつは来るのか?」
「さぁね。」
八郎はそう言うと、歳三と肩を組み、スマートフォンで写真を撮った。
「インスタにアップしようっと!」
「やめろ!」
歳三は慌てて八郎を止めようとしたが、遅かった。
「・・後で、“お仕置き”ですね。」
千鶴はそう言うと、何台目かのスマホを静かに握り潰した。
「ようこそいらっしゃいました。」
「仮面はつけねぇのか?」
「はい。今回は、特別なパーティーなので。」
「へぇ・・」
そう言った歳三は、あの男の気配を船室の奥から感じ取った。
「どうしたの?」
「何でもない。」
「そう。」
―“あの娘”は、どうしている?
―それが・・
(“あの娘”って、誰だ?)
「おい、お前そこで何してる?」
にほんブログ村