「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
土方さんが両性具有です、苦手な方はご注意ください。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「母様・・」
「どうしたの、ララ?」
その日の夜遅く、歳三が自室で身体を休ませていると、そこへララがやって来た。
「母様は、父様と愛し合っているから、“あんな事”をしたの?」
「そうよ。」
「わたしにも、わかる日が来るのかしら?」
「えぇ、きっと来るわ。」
「一緒に、寝てもいい?」
「おいで。」
娘を抱きながら、歳三はゆっくりと目を閉じて眠った。
久しぶりに、昔の夢を見た。
『これを、お前に。』
『綺麗だな。』
『お前の黒髪に、映えると思ってな。』
そう言って勇が照れ臭そうに笑いながら自分の髪に挿したのは、銀細工の血珊瑚の簪だった。
『高かっただろう?』
『あぁ。でも、お前が喜ぶ顔を見たくて・・』
勇の笑顔を、今となっても思い出す。
「母様?」
「何でもない・・よく眠れ。」
歳三はそう言うと、愛娘の頭を撫でた。
明朝、ララは婚礼の日を迎えた。
「綺麗だねぇ。」
「本当に。」
「きっと幸せになれるよ。」
「ありがとうございます・・」
「あんたが礼を言う事じゃないだろう。」
「すいません、つい・・」
歳三はそう言うと、自分が縫った花嫁衣装を纏った娘の姿を見た。
「父様は?」
「さぁ・・」
娘の大切な婚礼の日に、何故か夫のタルクの姿がない。
「一体何処に行っちまったんだい、あの子は?」
「わたしが探して来ます。」
「あぁ、頼んだよ。」
歳三がタルクの姿を探すと、彼は愛人と“よろしく”やっていた。
「ねぇ、いつ奥さんと別れるの?」
「娘の婚礼が済んだら、あんな年増、さっさと捨ててやる。」
「それはこっちの台詞だ。」
歳三が台所にあった包丁を手に、二人の前に現れると、そこには全裸で蒼褪めている彼らの姿があった。
「これは、その・・」
「黙れ。」
歳三はそう言うと、包丁を二人に向けた。
「おや、タルクは見つかったのかい?」
「え、えぇ・・」
「案内しな。」
「はい。」
物言わぬ骸となった息子とその愛人の姿を見たタリヤは悲鳴を上げ、歳三を詰った。
「この人殺し、息子を・・」
タリヤは石斧で額を割られ、嫁を最期まで詰れなかった。
「さようなら、お義母様。」
歳三はそう言うと、愛人宅に火を放った。
「あんた、遅かったわね。」
「えぇ、ちょっと・・」
「まぁ、あんたも色々と苦労したからねぇ・・」
「何の話ですか?」
涼しい顔をしながら、歳三はそう言うと笑った。
「では、行って参ります。」
「気を付けてね。」
「はい。」
村を出た歳三達一行は、敵国・アズールへと向かった。
「母様、わたし、怖い・・」
「大丈夫、母様がついているから・・」
花嫁の一行がカラル山脈の麓の宿で休んでいると、外から悲鳴が聞こえた。
「何かしら?」
そう言って窓から外の様子を覗いていた娘は、何処からともなく飛んで来た矢に胸を射たれて死んだ。
「盗賊だ~」
「早く逃げろ~!」
「ララ、ララ!」
「母様~!」
盗賊の襲撃に遭い、その混乱で歳三はララと離れ離れになってしまった。
「ララ、ララ!」
「おい、女が居たぞ!」
「女だ!」
歳三が血眼になって娘を探していると、運悪く盗賊達が歳三を見つけた。
「やめろ、離せ!」
「大人しくしていたら、殺さねぇよ!」
「へへ、いい女だぁ。」
四人の男に羽交い締めにされ、歳三は必死に抵抗したが、多勢に無勢だった。
「畜生、やめろ!」
「おい、さっさとしろよ。」
「わかってるって!」
歳三は髪に挿していた血珊瑚の簪を抜くと、その先を自分に覆い被さっていた男の目に突き刺した。
「このアマ!」
「なめやがって!」
右目を刺された男を見た彼の仲間達がそういきり立っていると、“何か”が彼らに向かって飛んで来た。
「うわぁっ!」
「ぎゃぁ~!」
男達の首が、一瞬にして吹き飛ばされ、その血飛沫を歳三は全身に浴びた。
「チッ、遅かったか。」
「やはり、盗賊を早く始末すべきでしたね。」
歳三が呆然としていると、そこへ赤髪碧眼の男と、金髪紅眼の男がやって来た。
「生存者は、この女だけか・・」
金髪紅眼の男がそう言いながら歳三を見ると、歳三は彼の腕を掴んだ。
「娘・・娘を・・」
「わかった、だからもうしゃべるな。」
(ララ・・)
歳三は、男の腕の中で気絶した。
「惨い事をする・・女子供見境なく殺すとは・・」
「全くです。年端もゆかぬ子供を敵国へ差し出すなど、正気の沙汰ではありません。」
赤髪碧眼の男―天霧九寿は、そう言うと犠牲になった幼い花嫁の冥福を祈った。
「行くぞ、天霧。」
「はい・・」
冷たい北風が、二人の男達の頬を撫でた。
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