「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
土方さんが両性具有です、苦手な方はご注意ください。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
――母様
どこかで、娘が呼んでいる。
――母様、助けて
娘が闇の中で、自分に向かって助けを求めている。
「ララ!」
歳三が目を覚ますと、そこは見知らぬ異国の部屋だった。
(ここは、一体・・)
「気が付かれましたか?」
頭上から声がして歳三が周りを見渡すと、自分の隣には背の高い赤髪碧眼の男が立っていた。
「漸く目覚めましたか。ここはカラル山脈を越えたアズールと貴方の母国・神羅国(しんらこく)との国境付近です。あなたは盗賊達に襲われ・・」
「ララは、娘は何処に!?」
「生き残ったのは、あなた一人だけでした。」
そう言って男は、ある物を歳三に手渡した。
それは、ララが生前愛用していた髪飾りだった。
――母様、可愛いねあれ!
――ララの髪に似合うから、買ってあげるね。
――うわぁ、ありがとう!母様、大好き!
蝶の形をした髪飾りは、血で汚れていた。
「ララ・・」
「ご安心下さい、あなたの娘さんの遺体は、手厚く葬りました。」
「そう・・ですか。」
「まだアズールの王都に辿り着くまでには、時間がかかります。我々はこの町に暫く滞在しますので、あなたはここで暫く休んで下さい。」
「はい。」
「では、失礼致します。」
「あの・・助けて頂き、ありがとうございます。あなたのお名前は?」
「天霧九寿と申します。では土方歳三様、わたしはこれで。」
天霧が歳三に一礼して部屋を出ると、入れ違いに天霧の主である風間千景が部屋に入って来た。
「貴様が神羅の巫女姫(みこひめ)か?」
「何だ、てめぇは?それに俺は、男で・・」
「神羅国により古より伝わる“巫女姫”は、男と女、両方の身体を持っていると・・」
千景は、そう言うと寝着の下に隠されている歳三の神秘めいた身体を舐めるように見た。
「巫女姫よ、我妻となれ。」
「お断りだ、俺には・・」
「貴様の村に、貴様の旦那と姑、その愛人が殺されていた。殺したのは、貴様であろう?」
「何を根拠に・・」
「貴様は、今まであの三人に煮え湯を飲まされて来たのであろう?亡くなった娘は連れ子で女児―それ故、姑からお前は子が産めぬ嫁と、虐げられて来たのであろう?」
「仮に、俺があの三人を殺したとして、俺に何の得がある?」
「娘の婚礼にかこつけて、退路を断ち、全てを捨てて来たのであろう?」
「俺は、最初から一人だ。俺には、親もきょうだいも居ねぇ・・」
「面白い、ますます貴様を気に入ったぞ。」
「千景様、入ってもよろしいでしょうか?」
「丁度いい、入れ。」
「失礼致します。」
歳三と千景の前に、包みを持った風間家の女中が現れた。
「その包みは?」
「開けてみよ。」
「あぁ、わかった・・」
歳三は怪訝そうな顔をして包みを開いた。
そこには、純白の花嫁衣裳が入っていた。
「おい・・」
「俺は本気だ。さぁ巫女姫よ、俺の手を取れ。」
「てめぇ、一体何を考えていやがる?」
「言った筈だ、二度と言わぬから覚えておけ。今日から貴様は、俺の妻だ。」
千景は、そう言うと歳三の唇を塞いだ。
「ねぇ、あの噂は本当なのかしら?」
「ほら、千景様は独身でいらっしゃるから・・」
「何の話をしておる?」
一方、アズールの王都・タハルークにある王宮で侍女達がそんな噂話をしながら針仕事をしていると、そこへ国王の第三王妃・キルシャがやって来た。
「キルシャ様・・」
「わたくし達は、何も・・」
「そうか。」
キルシャはそう言うと、侍女達を睨みつけた。
「わ、わたくし達はこれで・・」
「え、えぇ・・」
キルシャの様子を見た侍女達は、そそくさと自分達の針箱を持ってそのまま彼女の部屋から去っていった。
「全く、気が遣えぬ奴らめ・・」
「どうかなさったのですか、キルシャ様?」
「誰かと思うたら貴様か。」
キルシャが怒りを顔に貼り付けたまま背後を振り向くと、そこには国王の異父弟・タルートの姿があった。
「妾(わらわ)に何か用か?」
「何とつれない態度をお取りになって・・虫の居所でも悪いのですか?」
「あぁそうじゃ。妾の虫の居所が悪いのは、あの金髪の孺子(こぞう)の所為じゃ!」
「また、あの者とひと悶着あったのですか?」
「あやつめ、この国に献上された奴隷を解放せよと妾に口答えしたのだ!」
「それは・・」
「陛下のご寵愛を受けている妾をことあるごとに侮り、蔑ろにしおって・・あの孺子め!」
「かの者ですが、あの伝説の“巫女姫”とやらを見つけたとか・・」
「なに、それはまことか!?」
「はい。」
「古の書物により伝えられし“巫女姫”が存在したとは・・タルートよ、あの孺子より先に“巫女姫”を捕え、その首を妾の元へ持って参れ。」
「はっ!」
(妾はそなたよりも賢いのだ・・決してそなたの思い通りにはさせぬぞ、千景!)
「キルシャ様、司祭様がいらっしゃいました。」
「そうか。」
鏡の前で少ししなを作った後、キルシャは自室を出てある人物と中庭にある四阿(あずまや)で会っていた。
「これはこれは、キルシャ様・・我々の為に時間を割いて下さり・・」
「堅苦しい挨拶はなしじゃ。妾に献上したい物とはなんじゃ?」
「これを・・」
そう言って司祭が恭しくキルシャに差し出したのは、白銀の蛇にルビーがその両目に嵌め込まれた腕輪だった。
「異教徒共の墓所から掘り出して来た物です。」
「妾の好みに合うのぉ。」
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