「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
土方さんが両性具有です、苦手な方はご注意ください。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
王都へ向かう途中、キルシャ一行は、ある集落に立ち寄った。
そこは、エウリーケ大虐殺から逃れて来たエルシャ教徒の集落だった。
「この集落に居る全ての女を集めよ。」
「お許しください、わたくし達は・・」
「黙れ。」
「さぁ、殺されたくなければ早う妾の言う通りにせよ。」
「は、はい!」
集落の老人は、キルシャの言う通りにした。
「わたくし達を、どうするのですか?」
「伝説の巫女姫様の女官となる者を、この集落の女達の中から選ばせてやろう、光栄に思うがよい。」
「キルシャ様・・」
「さぁ、選ぶが良い。」
集落の女達は、泣く泣く家族と別れながらキルシャ一行に加わった。
「キルシャ様、王都が見えて参りました!」
「そうか。」
歳三は、馬車の天蓋を少しめくって外を見ると、そこには黄金色の王宮が陽の光を受けて美しく輝いていた。
(あれが、王宮・・)
タハルークの街は、カシュクールよりも数段華やかな所だった。
「その耳飾りはあの孺子から貰ったのか?」
「あぁ。あんた、これから俺をどうするつもりだ?」
「悪いようにはせぬ。」
「あの女達はどうなる?」
「それはそなたが気にする事ではない。」
「そうか・・」
キルシャ達を乗せた馬車は、王宮の中へと入っていった。
「キルシャ様だ!」
「キルシャ様がお戻りになられた!」
王宮の中へと馬車が入ると、王宮の警備をしていた兵士達が一斉にどよめいた。
(何だ?)
「すぐに陛下にお伝えしろ、キルシャ様がお戻りになられたと!」
「は、はい!」
「キルシャが戻って来ただと?それはまことか?」
「はい。それが、キルシャ様は伝説の巫女姫様を・・」
「すぐにキルシャを、ここに連れて参れ!」
アズール国王・ガウシスはそう部下に命じると、痛む頭に氷嚢を押し当てた。
「陛下、どうかなさったのですか?」
衣擦れの音と共に、ガウシスの第一王妃・エミヤが慌てて彼の寝室に入って来た。
「騒ぐな。いつもの発作だ。」
「そうですか・・」
「キルシャめ、一体何を考えているのだ・・」
「また、あの娘が何か・・」
「伝説の巫女姫を捕えたそうだ。」
「まぁ・・」
エミヤがガウシスの言葉を聞いて驚いていると、扉の外からキルシャの声が聞こえた。
「陛下、只今戻りました。」
「キルシャ、長旅ご苦労であった。伝説の巫女姫とやらは今何処に?」
「妾が用意した部屋で休んでおります。」
「そうか。」
「キルシャ、そなたとは後で話したい事がある、後でわたくしの部屋に来なさい。」
「はい・・」
キルシャ達が王都へ帰還した日の夜、王宮で彼女の帰還と、巫女姫をもてなす宴が開かれた。
「さぁ巫女姫様、沢山召し上がって下さいませ。」
「あ、あぁ・・」
自分の前に山のように盛られている果物を見て、歳三はただ戸惑うだけだった。
「さぁ、どうぞ召し上がれ。」
「はい・・」
歳三は言われるがままに、女官から注がれたワインを飲もうとした。
だがその時、王宮の中から悲鳴が聞こえた。
「何だ、今のは!?」
「悲鳴が聞こえたのは、エミヤ様の部屋からだ!」
兵士達がエミヤの部屋へと向かうと、そこには中から鍵が掛かっていた。
「クソ、開かない!」
「そこを退け!」
そう叫んだ歳三は兵士達を押し退けると、部屋の扉を蹴破った。
「おい、大丈夫か?」
「エミヤ様が・・」
女官がそう言って蒼褪めた顔をしながら寝台の方を指すと、そこには口端から血を流して絶命しているエミヤの姿があった。
「一体何が・・」
歳三がそう言って部屋の中を観察していると、寝台の近くにはワイングラスが置かれていた。
「この部屋に最後に入った奴は?」
「キルシャ様です。」
「何だと!?」
ガウシスは女官の言葉を聞いて驚愕の表情を浮かべた後、床に崩れ落ちた。
「陛下、しっかりなさいませ!」
「陛下!」
エミヤの死と、国王が突然倒れた事によって王宮内が騒然となった。
―これからどうなってしまうのだろう。
―キルシャ様は一体どちらに・・
―まさか、あの方がエミヤ様を・・
「妾を探しておるのか?」
「キルシャ様・・」
「妾はエミヤ様を実の姉のように慕っておった。その妾がエミヤ様を何故殺さねばならぬのだ?」
「も、申し訳ございません!」
(ふん、噂はあっという間に広がるものだ。悪いものであればすぐに・・)
「キルシャ様、“あの女”が見つかりました。」
「そうか。」
「では・・」
「見つけ次第、殺せ。」
「かしこまりました。」
(周りに何と言われようとも、妾は妾の道をゆくまでよ。)
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