「FLESH&BLOOD」二次小説です。
作者様・出版社様は一切関係ありません。
海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
「まぁ、お世辞が上手くなったわね。この様子ならば、宮廷にいつ出ても大丈夫ね。」
「奥様・・」
「堅苦しい呼び方はもう止めて頂戴。遠縁とはいえ、わたしとあなたは伯母と甥ではないの。」
「そうでしたね、ラウル様。」
「あなたの妹さんと、哀れなエヴァンジェリン伯夫人の最期を聞いたわ。神様は時に残酷な事をなさるのね。」
「ええ・・」
海斗の養母であるレティシアは、自室で就寝中に、屋敷に侵入して来た賊に惨殺された。
その賊は、数日後顔を潰された状態で、遺体となって発見された。
「二人の魂が安らかでありますように、アーメン。」
「アーメン。」
「あの子には、もう会った?」
「いいえ。」
「いずれ、あの子とはここで会えるわ。それまで、長旅の疲れをゆっくりと癒しなさい。」
「はい・・伯母様。」
ビセンテは“天使の貴婦人”ことラウルに向かって深々と一礼した後、部屋から辞した。
「奥様、大奥様がお呼びです。」
「わかったわ。」
ラウルは溜息を吐くと、徐に座っていた長椅子から立ち上がった。
面倒な事は早く済ませてしまおう。
「お義母様、わたくしにお話とは何でしょうか?」
「あなたでしょう、レティシアを殺したのは?」
「何の事です?」
「とぼけるのはお止し!お前が今まで何をして来たのか、わたしにはお見通しなんだ!」
「・・誰のお陰で、この家が大きくなっていると思っているんだ、婆。」
「ひ、ひぃっ!」
目障りだった姑は、突然ラウルの前で苦しみ、息絶えた。
「大奥様!」
「お医者様を!」
ラウルは悲嘆に暮れる振りをしながら、姑の葬儀に参列した。
「どうして、わたくしの周りには死の影が付き纏うのかしら?」
「伯母様・・」
「ビセンテ、あなただけが頼りよ。」
ラウルはそう言うと、ビセンテにしなだれかかった。
「ビセンテ様・・」
「まぁカイト、来ていたのね。」
ラウルは海斗を見てそう言うと、ビセンテから離れた。
「あの・・」
「さっきは、少し気分が悪くなってしまって、ビセンテに支えて貰っていたの。そうよね、ビセンテ?」
「は、はい・・」
「それではわたしはこれで失礼するわ。」
久し振りにビセンテと会えたというのに、何故か海斗は嬉しくなかった。
「さっきの事は・・」
「あの方が、ビセンテ様の伯母様なのですね。とても綺麗な方・・」
「わたしは、君しか・・」
「もういいです!」
自分を抱き締めようとしたビセンテの手を、海斗は邪険に払い除けてしまった。
(後で、ビセンテ様に謝らないと・・)
海斗がそんな事を思いながらベッドの中で寝返りを打っていると、廊下から人の話し声が聞こえて来た。
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