「PEACEMAKER鐵」二次創作です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
沖田さんが両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
「あなた、これからわたくし達はどうなるのかしら?」
「さぁ、それは神様にしかわからんさ。それよりもつね、少し休め。」
「はい・・」
「今の時期が一番大切なんだから、もっと俺に甘えてくれ。」
「はい、わかりました。」
つねは夫の言葉に甘えて、天幕の中で休む事にした。
リアンが領主夫妻を殺し、街を制圧してから、領民達は日々炭鉱や紡績工場で休みなく働かせられていた。
「いつまでこんな日が続くのかしら?」
「もう少し辛抱すれば、きっと元の生活に戻れるわよ。」
「そうね。」
「それにしても、つねさんは?」
「彼女なら、天幕の中で休んでいるわ。」
「産後間もないっていうのに、毎日長時間も働くのは辛いわね。」
「旦那さんが優しい人で良かったわよね。」
女達は針仕事をしながら、他愛のない話をしていた。
「あら、皆さんお揃いで。:
「マリア、良い所に来てくれたわ!」
「関節痛が酷くなってしまって、参っているのよ。」
「それなら、このハーブを使えばいいわ。」
「ありがとう、マリア!」
エウリケはマリアの事を“汚らわしい娼婦”と忌み嫌っていたが、女達はマリアの事を慕い、頼りにしていた。
「ねぇマリア、新しい領主様はどんなお方なの?」
「若い殿方だったわ。まぁ、堅物みたいで、わたしからお誘いしても邪険に断られたわ。」
「まぁ、ひどい!」
「仕方がないわ、こんな商売をしていたら、そんな目に遭うのはいつもの事よ。」
マリアはそう言うと、溜息を吐いた。
「さぁみんな、これでも食べて栄養をつけて!」
マリア達は、女達に焼き立てのパンを振る舞った。
「ありがとう!何処でこんなものを手に入れたの?」
「ちょっとね・・」
そう言ったマリアは、口元にいたずらっぽい笑みを閃かせた。
「おい、起きろ!」
「ん・・」
総司が目を覚ますと、彼女の前には何処か不機嫌な顔をした歳三の姿があった。
「何?」
「ここを出るぞ、奴らに嗅ぎ付けられる前に。」
「わかったわ。」
歳三と共に、総司は宿場町から出た。
「一体どういう事?“奴ら”って誰?」
「話は後だ!」
歳三は総司にフードを被らせ、宿場町を後にして街道へと向かった。
その数分後、リアン達が宿場町へとやって来た。
「この娘は居るか?」
「いいえ、見ておりません。」
「そうか。」
リアンは舌打ちすると、そのまま領地へと引き返した。
「ねぇ、これからどうするの?」
「あの山小屋で暫く暮らす。あそこなら、野宿よりマシだろう。」
「そうね。」
森の中で山小屋を見つけた歳三と総司は、暫くそこで暮らす事にした。
「薪があるわね。これなら当分寒さが凌げそうだわ。」
「あぁ。それに、家具も調理器具も一通り揃っているし、後は冬をどう過ごすかだな。」
歳三は、山小屋の中で武器になりそうな物を探した。
すると、薪小屋の中に、新しい斧があった。
(これなら、戦えそうだ。)
「土方さん、そこで何をしているの?」
「武器を探していた、いつでも戦えるように。」
「そう。あなたが勇敢な軍人だと、つねさんから聞いたことがあるわ。」
「軍人なんて、そんな大層なもんじゃねぇ。俺はただ、この手で沢山人を殺しただけだ。」
歳三はそう言うと、己の両手をじっと見つめた。
「俺の手は、血で汚れている。」
「土方さん・・」
「飯にするぞ。」
「はい。」
暫く二人は黙って宿場町で購入した野菜や鶏肉、ハーブなどを使って、簡単な料理を作って食べた。
「美味いな。」
「そうですね。土方さん、結構料理とかされるんですね?」
「まぁな。軍隊は自給自足が基本だからな。それに、料理は気分転換になるからな。」
「そうですか。」
「まぁ、これからどうすべきなのか、ゆっくりと考えていく事にするか。」
「はい。」
「お前ぇ、一通り家事が出来るんだな。」
「お母様から、“自分の事は自分でしなさい”と、物心着く頃から言われて来たので、侍女達に混じって料理や裁縫をしていました。」
「そうか。」
皿を洗いながら、歳三と総司はお互いの事を話した。
「なぁ総司、これから家事を二人で分担しねぇか?」
「いいですね!」
総司がそう叫んだ時、彼女の頬から数センチの所に、矢が刺さった。
「伏せろ!」
歳三はそう叫ぶと、腰に帯びていた長剣を抜き、外に出た。
「誰だ、隠れていないで出て来い!」
「あらあら、そんな顔をしていたら、折角の色男が台無しよ?」
神経を逆撫でするような声が聞こえたかと思うと、一人の女が歳三の前に現れた。
年の頃は二十前後といったことろか、豊満な胸を恥じらいもせずに晒すようなデザインのドレスを着ているその姿は、暗殺者ではなく娼婦のように見える。
「てめぇ、何者だ?」
「あたしのご主人様からの伝言よ。“連れの娘に危害を加えられたくなければ、大人しくしていろ”とね。」
「待て!」
「いつかまた、会いましょう。」
謎の女は口元に不敵な笑みを浮かべると、漆黒のドレスの裾を翻しながら闇の中へと消えていった。
「土方さん、ご無事ですか!?」
「あぁ。総司、怪我はねぇか?」
「はい。」
「まだ敵がこの近くに潜んでいるかもしれねぇから、お前ぇは小屋の中から出るな。」
「わかりました。」
翌朝、二人は山小屋を後にした。
「昨夜俺達を襲ったのは、お前の命を狙っている奴に雇われた殺し屋だった。」
「じゃぁ、山小屋を発ったのは、わたし達があそこに居ると嗅ぎ付けられない為ね?」
「そうだ、そして俺達は急いで南へ向かわなければいけない。」
「南に、一体何があるのかしら?」
「それは、行かなきゃわからねぇな。」
「そうですね。」
森を抜けた二人は、南へ向かう船が停泊している港へと向かった。
だが、南行きの船は悪天候の為明朝まで出ないという事だった。
「船が出るまで、宿で休むぞ。」
「はい。」
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