「PEACEMEKER鐵」の二次創作小説です。
沖田さんが女性という設定です。苦手な方はご注意ください。
捏造設定あり、オリジナルキャラ多めです。苦手な方はご注意ください。
作者様・出版者様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「お母様、これお家のお庭で摘んできたの!」
雪はそう言うと、リボンで束ねた白詰草の花束を総司に手渡した。
「有難う。」
「ねぇお母様、来年のお花見が楽しみね。」
「ええ、そうね。」
娘の艶やかな黒髪を優しく梳きながら、総司は彼女を身籠った時の事を思い出していた。
池田屋で喀血し、伊東達が屯所を襲撃した時に総司は歳三の子を身籠っていることに気づいた。
二月前から体調が優れないのは、労咳の所為だと思い込んでいた総司だったが、月のものが遅れていることに気づいた。
元から食が細く、労咳に罹ってから更に食欲が落ちていた総司であったが、つわりが酷くなり益々食欲がなくなっていった。
「総司、腹の子は諦めて欲しい。」
「どうして、そんな事を言うんですか?」
「お前ぇは労咳に罹っている。そんな身体じゃぁ、腹の子を産むまでもたねぇかもしれねぇ。」
「嫌です。」
「総司、お願いだから聞き分けてくれ。」
「土方さん、わたしはこの子を産みたいんです。貴方と愛し合った証を、この世に産みたいんです。」
「総司・・」
歳三は苦痛に満ちた顔で、総司を見た。
華奢な身体は病の所為でますます痩せ細り、目の下には隈が出来ていた。
こんな身体で子供を産むなど無理だと歳三は思い込んでいた。
だが総司は、頑として子供を産みたいと言い張った。
女は強い―歳三は総司のそんな姿を見て、労咳に罹りながらも自分を育ててくれた亡き母と姉の姿を彼女に重ねていた。
総司に折れた歳三は、松本良順医師と山崎に総司の妊娠を報告した。
「沖田さんが出産するいうんは、並の事ではありません。健康な女子がお産の時に死ぬことも多いいうのに、ましてや沖田さんは労咳に罹っている身。最悪の事態を考えておかなあきまへん。」
「最悪の事態、だと?」
「母子共にお産で亡くなるいうことです。これからは沖田さんには無理をさせんようにしてください。」
「解った。」
歳三が山崎の部屋から出て行き、副長室へと戻ろうとした時、開かれた襖の隙間から、総司が縫物をしている姿が見えた。
時折まだ膨らんでもいない下腹を撫でながら、総司は赤子の産着を人は一針一針丁寧に縫っていた。
「総司、身体の調子がいいのか?」
「はい。何もすることがないので、縫物でもしようかなと思って。」
「余り無理をするんじゃねぇぞ。」
「わかっていますって。それよりも土方さん、この子の名前、考えておいてくださいね。」
「俺が考えるのかよ?」
「だって、あんなに素晴らしい俳句を作る土方さんだったら、きっとこの子にも良い名前をつけてくれるかなぁって思って!」
「・・てめぇ、後で覚えてろよ?」
歳三は眉間に皺を寄せながらそう言って総司を睨みつけると、彼女は軽やかな声で笑った。
今にして思えば、この時が自分達夫婦の幸せな時間だったかもしれない。
乱世の只中に生きながらも、歳三の隣には常に総司の存在があった。
だが、今は―
「残念ですが、奥様の体調は余り芳しくありません。そろそろ覚悟しておいた方がよろしいでしょう。」
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