素材は、
黒獅様からお借りしました。
「黒執事」の二次小説です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
※シエルが女装しています、苦手な方はご注意ください。
大雪が舞う中、その双つの命は産まれた。
一人は美しい碧い瞳を持った兄。
もう一人は、碧と紫の瞳を持った弟。
弟は、そのオッドアイ故に“忌み子”とされ、乳母の手によって離宮で育てられた。
双子の王子は、それぞれシエルとジェイドと名付けられた。
「この子に掛けられた呪いを解くには、この子を姫君として育てなされ。」
国一番の占い師は、そう言って国王夫妻にシエル王子の死を予言した。
「シエル、元気で。」
「必ず、迎えに来るからね。」
国王夫妻は、そう言ってシエルに微笑んだ。
シエルは二人の言葉を信じて、離宮で彼らが迎えに来る日を指折り数えて待っていた。
そして遂に、その日が来た。
「シエル。」
「お父様、お母様!」
両親がシエルを迎えに来たのは、彼が10歳の誕生日を迎える一週間前の事だった。
「ジェイド、あなたの弟よ、挨拶なさい。」
「シエル、会えて嬉しいよ。これからは、一緒に居られるね。」
シエルとジェイドが共に王宮で暮らすようになってから、3年の月日が経っていた。
「シエル、あなたに縁談があるの?」
「僕に?」
「ええ、お相手はS国のヘンリク王子よ。」
「ヘンリク王子・・」
シエルは、兄からヘンリク王子の“悪い噂”を聞いていたので、その名を母の口から聞いた途端、顔を曇らせてしまった。
「どうしたの?」
「いえ・・彼には、色々と悪い噂があるので・・」
「確かに、あの方へあなたを嫁がせるのは気が進まないわ。でも、先方があなたを望んでいるのよ。」
「ヘンリク王子が、ですか?」
「ええ。とにかく、一度ヘンリク王子にお会いしてみたらどうかしら?」
「はい・・」
こうして、シエルはヘンリク王子とお見合いをする事になった。
「セバスチャン、シエル王女は今いくつだ?」
「シエル王女は、今年で13歳となられます。」
「俺よりも5歳も下か・・まぁいい、その年なら調教のし甲斐がある。」
ヘンリク王子はそう言った後、口端を上げて笑った。
(反吐が出る・・)
ヘンリク王子の騎士兼秘書として彼が幼少の頃から仕えていたセバスチャンだったが、ヘンリクの傲慢な性格や粗暴な言動には嫌気が差していた。
己の身分が低くなかったら、今すぐにそのむかつく顔を殴ってやりたい位、セバスチャンはヘンリクが嫌いだった。
シエル王女が政略結婚とはいえ、こんな男の元に嫁ぐなど、可哀想だとセバスチャンは思った。
「時間だ、行くぞ。」
「はい・・」
ヘンリク王子と共にセバスチャンが王宮の応接間に入ると、そこには怯えたような表情を浮かべているシエル王女と、こちらを威嚇しているジェイド王子の姿があった。
セバスチャンは、碧と紫の瞳で自分を見つめるシエルに、一目惚れしてしまった。
シエル王女もセバスチャンの熱い視線に気づいたのか、少し頬を赤く染めた後、俯いてしまった。
にほんブログ村