テーマ:二次創作小説(946)
素材は、てんぱる様からお借りしました。 「黒執事」の二次小説です。 作者様・出版社様とは一切関係ありません。 ※シエルが女装しています、苦手な方はご注意ください。 「それにしても、王妃様は本当に殺されたのかしら?」 「そんな事、大きな声でいうものじゃないわよ!」 「でもねぇ・・」 王妃が謎の死を遂げた事により、その死はセバスチャンによる毒殺なのではないかという噂が王宮内に飛び交っていた。 「それにしても、セバスチャン様は都に若い娘を囲んでいるそうよ。」 「若い娘?」 「ええ、何でもセバスチャン様が身請けなさった妓生で、まだ十三だとか。」 「子供じゃないの!」 「彼女は、書画や舞踏・音曲などに秀でていて、大妃様も一目置かれている存在だとか。」 「へぇ・・」 「セバスチャンが、側室を迎えただと?」 「世子様・・」 「ただの噂ですわ、どうぞお気になさらず・・」 「いや、もっと詳しく聞きたいな。」 ヒョンジャは、そう言って自分に頭を下げる女官達を見た。 「はぁ・・」 シエルは、今日も玄琴を奏でながら、セバスチャンが来るのを待っていた。 あれから―王妃が死んでから、セバスチャンは王宮内で雑務に追われているようで、この四日位この宮殿に顔を出さなかった。 (外に女でも出来たんだろう。まぁ、僕はこんなんだし・・) シエルがそう思いながら玄琴を奏でるのを止めた時、一人の女官が彼の元へとやって来た。 「あなたが、シエル様ですか?」 「あぁ、そうだが・・お前、何処の女官だ?」 「わたくしは、世子様の使いで参りました。シエル様、世子様がお呼びです。」 「世子様が?」 (世子様が、僕に一体何の用だろう?) そんな事を思いながらシエルがヒョンジャの元へと向かうと、彼は煙管で何かを吸いながらシエルを見た。 「シエル様をお連れしました。」 「お前はもう下がってよい。」 「はい。」 「世子様・・」 「久しいな、シエル。」 ヒョンジャはそう言うと、シエルを己の膝上へと抱き寄せた。 「そなた、セバスチャンの側室になったそうだな?」 「はい。セバスチャンはわたくしによくして下さいます。」 「そうか。」 ヒョンジャはそう言った後、シエルの髪を撫でた。 「そなた、わたしのものにならぬか?」 「それは、出来ません・・」 「では、力ずくでわたしのものにしてやろう。」 ヒョンジャはそう言うと、シエルのチョゴリの胸紐を解き始めた。 「お止め下さい!」 「嫌じゃ。」 「誰か~!」 「人払いしておる故、ここに居るのはわたしとそなただけ。」 シエルはヒョンジャから逃れようとしたが、彼はビクともしなかった。 「何をしているのです?」 「おや、来たか。」 鬼のような形相を浮かべながら自分の方へとやって来るセバスチャンを見て、ヒョンジャはほくそ笑んだ。 「シエルから離れなさい。」 「いつもは澄ましている癖に、そなたもそのような顔をするのだな?」 「あなたの目的は何なのです?」 「そなたの色々な顔を見てみたいのだ。」 ヒョンジャは、シエルを抱き上げると、彼を寝室へと運んだ。 「シエルに何をする?」 「セバスチャン、シエルを取り戻したくば、そなたは戦場で武功を立てよ。」 「貴様、最初からそのつもりで・・」 「母をわたしから奪った仕返しだ、セバスチャン。安心しろ、お前が戦場から戻って来るまで、シエルはわたしが大切に預かっておく。」 「セバスチャン!」 「シエル!」 互いに手を伸ばそうとしたセバスチャンとシエルは、内侍達によって非情に引き裂かれた。 「世子様、あなたは一体何をお考えなのですか?」 「言ったであろう、わたしはセバスチャンの色々な顔を見たいと。」 「わたしを、殺すおつもりですか?」 「殺しはせぬ。そなたは大切な人質だからな。」 ヒョンジャはそう言うと、シエルの右目を覆っていた眼帯を外した。 「美しい色の瞳だ。」 「お止め下さい!」 「何故、隠す事がある?」 ヒョンジャはそう言って笑いながら、シエルの髪飾りを弄った。 「その髪飾りは、あいつから贈られたのか?」 「だとしたら、どうだというのです?」 「強気なそなたの性格、気に入っておる。わたしの周りに居るのは、わたしに媚びる者達ばかり。いつもわたしの機嫌を損ねないかどうかを考える者達。そんな輩に取り囲まれ、わたしはいつもうんざりしていた。そんな中、お前とあいつだけは、わたしに媚びなかった。」 ヒョンジャはそう言うと、シエルの髪を梳いた。 「不思議な色の髪だ。銀が少し混じった蒼がある。あいつは、夜の闇のように艶やかで美しい髪を持っている。」 「世子様の御髪も、美しいではありませんか。」 「わかっておらぬな、そなた。どれだけ褒められようとも、己より優れた容姿や能力を持つ者に嫉妬するというのが人の常というものだ。」 ヒョンジャは、シエルに初めてセバスチャンと会った時の事を話した。 セバスチャンとヒョンジャが初めて会ったのは、ヒョンジャが七歳の時だった。 その日、セバスチャンとヒョンジャはそれぞれ母親に連れられて、王が開いた詩作の会に出席した。 名妓と謳われたセバスチャンの母は見事な詩を何篇もその場で発表し、またセバスチャンも詩を即興で披露して、周りから絶賛された。 ―やはり王様が惚れ込んだだけの事はある。 ―美貌と才覚を兼ね備えた者が側室とは、余りにも惜しい・・ ―家柄と美貌だけでは・・ ヒョンジャは、怒りと屈辱で顔を歪ませた母の顔を、未だに忘れる事が出来なかった。 セバスチャンは、詩作だけではなく、書画や音曲、剣術などが出来た。 ヒョンジャは彼に負けぬようそれらに励んだが、天賦の才を持ったセバスチャンが彼に敵う筈がなかった。 『ヒョンジャ、どうしてあなたは・・』 いつしか、母は自分を責める事が多くなった。 彼女は、世子であるヒョンジャよりも、庶子であるセバスチャンの方が優れている事を認められなかったのだろう。 『憎らしい・・あの女をどうしたら・・』 『わたくしに、良い考えがございます、王妃様。』 母にあらぬ事を吹き込んだのは、彼女の親族だった。 『あの目障りな妓生を王宮から、いえこの世から消すには・・』 セバスチャンの母は、身に覚えがない罪を着せられ、獄死した。 「世子よ、安心なさい。」 邪魔な存在を消した母は、嬉しそうだった。 しかし、その母はセバスチャンに殺された。 「わたしは、あいつが憎くて堪らぬ。全てを生まれながらにして持ったあいつに。しかし、あいつにもお前という弱点がある事を知り、嬉しくなった。これで、あいつにわたしと同じ思いをさせる事が出来るとな。」 「やめて、離し・・」 「まだお前は殺さぬ。お前は、大切な人質だからな。」 セバスチャンは、世子にシエルを人質に取られ、戦地へ赴く事になった。 「そんな顔をしないで下さい、すぐに戻って来ますから。」 「これ、持っていろ。」 セバスチャンが戦地へ赴く日、シエルは彼に母の形見の簪を手渡した。 「ありがとうございます、この簪をあなただと思って大切に致します。」 「う、うるさいっ!」 「では、わたしからこれを。」 セバスチャンはそう言うと、シエルにある物を手渡した。 「これは?」 「わたしの母の形見で、母が父から渡された蒼玉の首飾りです。」 「セバスチャン、必ず僕の元へ帰って来い!」 「ええ、必ず。」 セバスチャンが向かった戦地では、異民族との戦いが長期化し、兵士達は疲弊しきっていた。 「食事は皆さん、どうなさったのですか?」 「そこら辺に生えている雑草で簡単な汁物や粥を作ったりしていたよ。」 「そうですか・・」 「ここら辺の村は、村人達を全員殺された上に食糧を略奪されちまったから、自給自足の毎日さ。」 (これでは、戦いの前に兵士達が死んでしまいますね。) セバスチャンがそう思いながら山で狩りをしていると、そこへ一頭の鹿が通りかかった。 セバスチャンはその鹿を持ち帰り、その肉を鍋にして兵士達に振舞った。 「あんた、その格好からして王族だろ?王族が何だってこんな所に来たんだ?」 「少々、訳ありでね・・」 「まぁ、王宮は色々とあるからね。」 (シエル、元気にしているのでしょうか?) セバスチャンがそんな事を思いながらシエルから渡された簪を眺めていると、同じ頃シエルは溜息を吐きながらヒョンジャに宛がわれた部屋で寝返りを打っていた。 (中々、眠れないな・・) シエルがそっと首に提げている蒼玉を見つめていると、誰かが部屋に入って来る気配がした。 にほんブログ村 二次小説ランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
あみりん9129さんへ
あみりん様のご期待に沿えるかどうかわかりませんが、二人の男に言い寄られる主人公を書いてみようと思います。 一度書いてみたかったんです、こういう設定w (2024.04.17 07:12:32) |
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