表紙素材は、
装丁カフェからお借りしました。
「薄桜鬼」「天官賜福」「火宵の月」二次小説です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。
「兄さん、来て良かったね。」
「あぁ。」
その日、花城と謝憐は、新婚旅行で海辺の観光地に来ていた。
絶景スポットとして知られる縁結びの神社に参拝し、神社の近くのカフェで昼食を取った後、二人はとんでもない災難に見舞われた。
「え、予約されていない?」
「はい・・」
予約していた筈のホテルにチェックインしようとした時、ホテルのフロントで予約されていないとスタッフから言われた二人は、急遽他の宿を探す事になったが、折しもその日は祭りと花火大会があり、花火が見える海辺のホテルは全て満室だった。
「兄さん、大丈夫?」
「うん・・」
少し日が落ちて涼しくなるだろうと思っていた二人だったが、彼らは日本の酷暑を舐めていた。
熱が籠りやすい浴衣姿の謝憐は、花火が見える高台へと向かう際に、軽い熱中症になってしまった。
「兄さん・・」
謝憐の異変に気づいた花城は、背負っていたリュックサックのサイドポケットからミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、それを謝憐に手渡した。
『もし、その方、どうかなさいましたか?』
二人が困っていると、そこへ一人の和服姿の女がやって来た。
『宿を探しているのですが、恋人が熱中症になってしまって・・』
『まぁ、それは大変ですね。よろしければ、うちのホテルに来ませんか?』
『助かりました。』
女性に二人が案内されたのは、高台にある高級ホテルだった。
『ようこそ、火宵グランドホテルへ。お連れ様はそちらのソファに寝かせて下さい。』
『はい・・』
謝憐をソファに寝かせた花城は、フロントでチェックインを済ませると、謝憐の隣に腰掛けた。
「兄さん、辛くない?」
「うん・・」
『お部屋に、ご案内致します。』
『はい、わかりました。』
花城は謝憐を横抱きにすると、自分と彼の荷物を持ち部屋へと向かった。
『こちらです。』
案内された部屋は、海と市街地が見渡せる最上階の部屋だった。
『この宿は全室、オーシャンビューとなっております。どうぞ、ごゆっくりお寛ぎ下さいませ。』
花城に部屋の説明をした仲居は、そう言うと花城に向かって一礼すると、部屋から出て行った。
「ねぇ種香、あのお客さん達見た?凄いイケメンよね。」
「モデルか俳優かしらね。」
厨房で仲居頭の種香と小里がそんな話をしていると、そこへ花城と謝憐を助けた和服姿の女性が入って来た。
「お前達、何をくっちゃべっている!」
「ま、まぁ殿・・随分とお早いお帰りで・・」
「ここでは、“女将”と呼べ。」
「まぁ、すいません。」
「夕食の時間までまだ時間があるから、わたしは風呂に入って来る。」
和服姿の女性―火宵グランドホテルのオーナー兼女将・土御門有匡は、そう言うと厨房から出て行った。
「今日は機嫌悪そうね。」
「何たって、もうすぐ法事があるんだもの。」
「そりゃ、あいつらと会うの、あたし達だって嫌よ。」
厨房を出た有匡は、大浴場の脱衣場へと入ると、籠の中に着物と帯、そして襦袢と紙に挿していた簪を入れ、広い湯舟の中に浸った。
(もうすぐ法事か・・)
湯舟から上がり、有匡は髪を洗いながら、法事で初めて父方の親族と顔を合わせた日の事を思い出していた。
『お前が、あの時の子か?』
『本当に、不吉な色の目をしているわねぇ。』
有匡は、忌まわしい過去を振り払うかのように、ドライヤーで念入りに髪を乾かした。
「先生!
「火月、ここでは“女将”と呼べと言っているだろう。」
「す、すいません・・」
有匡の元へ駆けて来た金髪紅眼の女性―有匡の妻であり火宵グランドホテル若女将・火月は、そう言って俯いた。
「今日は忙しくなる。」
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