「エドガー様!」
「ステファニーさん!」
ウィーンから約半年。
離ればなれになっていたエドガーとステファニーは、ようやく再会することが出来た。
「ステファニーさん、会いたかった・・」
そう言ってエドガーは、ステファニーをギュッと抱き締めた。
「わたくしも・・あなたのことを1日たりとも、忘れたことなどございませんわ。」
ステファニーはエドガーと再会できた嬉しさの余り涙を流した。
「なぁに、あの方?」
「初めて見る顔だわ。」
「エドガー様とお知り合いなのかしら?」
「もしかして、恋人だったりして・・」
抱き合う2人を見て令嬢達はヒソヒソと噂話をした。
「お似合いだな・・」
クリストフはステファニーと抱き合う男を見て言った。
傍目から見ても、ステファニーとあの男はお似合いのカップルだ。
ステファニーのことは、同じ屋根の下で暮らしている内にだんだん惹かれていき、彼女のことを好きなってしまったが、あんなハンサムな恋人がいるんなら諦めるしかない。
(ツイてないよなぁ、僕って・・)
「どうしたんだ、浮かない顔して?」
溜息をついてシャンパンを呑んでいると、いつの間にか隣でアレクセイが柱に寄りかかるようにして立っていた。
「・・何でもないよ。」
「嘘吐け。お前の溜息の原因はあれだろ?」
そう言ってアレクセイはステファニーとエドガーを指した。
「ステファニーさんのこと、好きで今夜告白しようって決めたのに・・あんなハンサムな恋人がいたんじゃ、諦めるしかないよ。」
「バカだな、お前。俺はたとえ好きな相手に恋人がいたとしても、そいつから奪うつもりでいるぞ。」
「・・そうやってお前何人も女泣かせてきたのかよ・・」
「恋は先手必勝。好きな相手のハートを奪ったもん勝ちさ。」
アレクセイはそう言ってスタスタと2人の方へ歩いていった。
「ステファニーさん、あなたに聞きたいことがあるのですが。」
「なんでしょう?」
「どうして、男なのにドレスを?」
「え?」
エドガーの言葉に、ステファニーの笑みがひきつった。
「どうして、そのことを?」
「あなたに似たあの人に聞きました。」
「それは、私も知りません。物心着く頃から、男なのに女として育てられました。兄も弟も男として普通に毎日を過ごしているのに、何故自分だけドレスを着なければならないのか、と一度両親に聞いたことがあります。でも、両親は堅く口を閉ざしたままで・・」
ステファニーがそう言ってエドガーを見ると、彼は何かを考え込んだような顔をしていた。
「軽蔑・・なさいますでしょう? 男なのに、ドレスを着ているなんて。」
「いいえ。私はあの人からあなたが男だと聞かされたとき、何故か嫌悪感が湧きませんでした。それよりも、あなたをもっと好きになってしまった。」
エドガーはステファニーに微笑み、ステファニーの手に接吻した。
「あなたに、お渡ししたいものがあります。目をつぶってください。」
「え?」
ステファニーは言われた通りに目をつぶった。
「もう、開けていいですよ。」
ステファニーが目を開けると、左手の薬指には、シャンデリアの光を受け、淡く美しい輝きを放つ真珠の指輪があった。
「これは?」
「代々セルフシュタイン家の花嫁に伝わる指輪です。 私と結婚してください、ステファニーさん。」
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