王妃との謁見を終えたガブリエルは、蒼褪めた顔をして彼女の部屋から出て来た。
「ガブリエル様、どうなさいましたか?」
「いいえ・・少し気分が優れないの。」
「暫くそちらにお掛け下さい、今水を持って参ります。」
ピエールが廊下を駆けていくのを見送ったガブリエルは、椅子に腰を下ろして溜息を吐いた。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「ええ。それよりも、お母様にお会いできるの?」
「ええ。暫く休まれた方がよろしいのでは?お顔の色が悪いですよ?」
ルイーゼに言える筈のない秘密を抱えながら、ガブリエルはピエールが戻って来るのを待った。
「あら、ガブリエルじゃないの。どうしたの、こんな朝早くに?」
「アレクサンドリーネ様、おはようございます。」
ガブリエルはそう言うと、アレクサンドリーネを見た。
「顔色が悪いわね?」
「ガブリエル様、お水です。」
「ありがとう、頂くわ。」
ガブリエルは震える手でコップをピエールから受け取ると、水を一気に飲み干した。
冷たい水が乾いた喉と心を潤してくれたような気がした。
「ガブリエル、お母様に何か言われたの?」
「いいえ。わたくし、母に会いますのでこれで失礼。」
「そう。余り無理をしない方がいいわ。」
アレクサンドリーネが心配そうにガブリエルの顔を覗きこんだ時、侍女が彼女に声を掛けた。
「アレクサンドリーネ様、もう参りませんと。」
「わかったわ。ガブリエル、また後でね。」
「ええ、また。」
アレクサンドリーネが廊下の角に曲がって消えていくのをガブリエルは静かに見送った。
「アレクサンドリーネ様、今後二度とあのような真似はなさいませんように。」
「あら、どうして?ガブリエルはわたくしの友人です。友人に声を掛けてはいけないの?」
「そ、それは・・」
「誰がどう言おうが、わたくしはアンヌ様の味方です。」
アレクサンドリーネは、アンヌを陥れようとしている母の策略など知らずに、アンヌを救う事を考えていた。
「お母様!」
「ガブリエル・・元気そうでよかった。」
「お母様も。アリスティド様に酷い目に遭わされていない?」
「ええ。それよりも、王妃様とお会いしたの?」
「お母様、何故それを知っているの?」
「アレクサンドリーネ様が、あなたの様子がおかしいと教えてくれたのよ。それとピエールもわたしに報告してくれたわ。」
「お母様、わたし王妃様からとんでもない話を聞いてしまったの。」
「とんでもない話・・まさか・・」
ガブリエルは、母の顔が蒼褪めてゆくさまを見て、王妃の話が真実であることを知った。
「お母様、わたしが・・お母様とニコル伯父様との間に産まれたという話は本当なの?お願い、本当のことを話して。」
「・・いいわ、お前に一生この事を隠そうと思ったけれど、全て話しましょう。ガブリエル、ひとつお願いがあるの。」
「なぁに、お母様?」
「話し終っても、わたしの事を嫌いにならないでいてくれる?」
「わたしは、お母様のことを愛しています。」
ガブリエルはそう言うと、母の言葉に対して静かに頷いた。
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Last updated
2013年05月18日 16時22分29秒
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