「天上の愛 地上の恋」二次創作小説です。
作者・出版社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方はご覧にならないでください。
「お疲れさま!」
「お疲れ。これからどうする? 一杯やろうか?」
「いいね。」
NY市内にある病院のロッカールームで、アルフレートが同僚達とそんな話をしながら白衣を脱いで私服に着替えようとした時、白衣のポケットに入っていたポケットベルが鳴った。
「いつも帰ろうとするときに急患か・・ついてないな。」
「ああ。でも仕事だから仕方がないな。」
同僚と溜息を吐きながらアルフレートが緊急救命室へと向かうと、丁度救急車から担架に乗せられた急患が救命士によって運ばれてくるところだった。
「患者の容態は?」
「ハドソン川から身投げしたようで、全身打撲に後頭部強打、低体温症にも罹っています。」
「厄介だな。」
アルフレートが担架に乗せられた急患の意識を確かめる為、彼の目にライトを照らしたとき、自分の腕を急患が掴んだ。
(何だ?)
「アルフレート、急げ!」
「は、はい!」
慌ててアルフレートは同僚とともに手術室へと入った。
急患で運び込まれた男は、一命を取り留めた。
「患者の意識は?」
「まだ戻らないみたいです。後頭部を強打している上、低体温症に罹っていますから、意識を取り戻すまでは暫く時間がかかるでしょう。」
「そうか。アルフレート、警察の方が君に話を聞きたいと言って来ているんだが、時間あるかい?」
「はい。」
一日の疲れが取れないまま、アルフレートは警察官が待っているカフェテリアへと向かった。
そこには、肥満体の刑事とオリーブのように痩せている刑事がテーブルに座っていた。
「お忙しいところ、申し訳ありませんね。」
「いいえ。それで、わたしに聞きたいこととは何でしょうか?」
「この病院に運び込まれた急患の人、身元が判るものを所持していないのです。ですが、こんな物が彼の私物の中にありました。」
太鼓腹を揺らしながら、肥満体の刑事がテーブルの上にある物を置いた。
それは、双頭の鷲が象られた美しい勲章だった。
「アルフレートさん、あなたは確かご先祖がオーストリアの方でしたね?」
「ええ。わたしの曽祖父は、第一次世界大戦前にオーストリア=ハンガリー帝国からアメリカに移民として海を渡ってきました。この勲章なら、曽祖父のアルバムで一度見たことがあります。」
「申し訳ないのですが、そのアルバムをお借り出来ませんか?」
「はい。捜査に役立つことになるのでしたら、お貸しいたします。」
「有難うございます。詳しいことが解りましたら、またこちらに伺います。」
刑事達はアルフレートに礼を言うと、カフェテリアから出て行った。
カフェテリアから出た彼は、急患の男が居る病室へと入った。
彼はベッドの上で静かに眠っていた。
やはりあの時、彼が自分の腕を掴んだのは錯覚だったのだろうか―アルフレートがそんな事を思いながら刑事から預かった勲章を男の手に握らせようとした。
その時、男の蒼い瞳がゆっくりと開かれた。
「アルフレート?」
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