新政府軍の砲撃に晒された鶴ヶ城内では、連日怪我人や病人で溢れ、千達はその看病や手当に追われていた。
「土方さん、お話しとは何ですか?」
「大鳥さんから、会津から撤退するよう命令された。」
「そうですか・・」
「どうするのかは、お前達で決めろ。」
「・・わたくしは、会津に残ります。」
千尋はそう言うと、歳三に向かって頭を下げた。
「副長、今までお世話になりました。」
「仙台で待ってる。」
「はい・・」
歳三と共に千が仙台へと発つ数日前、彼は千尋と共に食糧の調達をする為、城から出て近くの農村へと向かった。
「まだ敵の姿はありませんね・・今の内に食糧を調達して城に戻りましょう。」
千尋がそう言った時、背後から大きな砲声が聞こえて来た。
「まさか、こんな近くに敵が・・」
「あなたは先に城へ戻っていなさい。ここはわたしが食い止めます。」
「でも・・」
「早く行きなさい!」
千は食糧を風呂敷に包むと、農村を出て城へと向かった。
だが運悪く、彼は敵に見つかってしまった。
「こいつ、土方の小姓だ!」
「殺して、その首を桂さんへの土産にしちゃる!」
下卑た笑みを浮かべた敵兵の首がその身体から離れ、残された胴が地面に転がった。
「早く逃げなさいって言っているでしょう!」
「こなくそ!」
千尋は間髪入れず、もう一人の敵を斬った。
「今の内に、早く!」
千は千尋に背を向けて再び城へと向かって走り始めた。
「千尋・・」
あと少しで城に着くという時に、千は思わぬ人物と再会した。
「義兄さん、どうして・・」
「千尋、今ならまだ間に合う。また兄弟仲良く・・」
「冗談はやめてくれ!今まで僕の事を邪魔だと思っていた癖に!」
「そんな事はない!」
「退け、さもなくば斬る!」
「千尋、お前は・・」
千に刃を向けられ、優之はショックを受けた後、拳銃を彼に向けた。
「お前だけは・・信じていたのに!」
千は目を閉じ、襲い掛かってくる激痛を覚悟した。
だが目を開けると、そこには優之の銃弾を胸を受け倒れている千尋の姿があった。
「しっかりして下さい!」
「土方さんを・・頼みましたよ。」
千尋はそう言った後、静かに息を引き取った。
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