画像は
湯弐様からお借りしました。
「FLESH&BLOOD」の二次小説です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
「カイト、話したい事とは何だ?」
「これを、子供達に渡して。」
海斗はそう言うと、ジェフリーにある物を手渡した。
それは、海斗がつけたジェフリーとユーリアの育児日記だった。
「俺はあと、どの位生きられるのかがわからないから・・」
「そんな事を言うな。」
ジェフリーはそう言うと、海斗を抱き締めた。
「あのね、ジェフリー、皆で行きたい事があるんだ。」
「わかった。」
週末、海斗達は海辺でのピクニックを楽しんだ。
「カイト、寒くはないか?」
「ううん、平気・・」
海斗はそう言った後、激しく咳込んだ。
「お母様?」
「ユーリア、大丈夫だからね。」
不安そうに自分を見つめる娘の頭を海斗は優しく撫でた。
それから、海斗は体調を許す限り、週末になると家族と出かけた。
「ねぇお父様、お母様、良くなるよね?」
「あぁ・・」
幼い子供達を安心させる為に、ジェフリーは嘘を吐いた。
だが、その事に気づいた海斗達は、子供達を寝室に呼んだ。
「あのね、今日は二人に話しておきたい事があるの。」
「話しておきたい事って?」
「お母様の病気は、もう治らない。残念だけれど、あなた達と居られる時間は、そんなに長くないの。」
「嫌だよ、そんなの!」
「お母様は、あなた達を遺して逝くのが辛い。でも、その日が来るまで、お母様はあなた達と一緒に楽しい思い出を作りたいの。」
「お母様・・」
子供達と話をした後、海斗はジェフリーを自分の寝室に呼んだ。
「ジェフリー、子供達に嘘を吐かないで。あの子達は俺達が思っているよりも、色々と考えているから。」
「わかった・・」
海斗の病状は、日に日に悪化していった。
「先生、俺はあとどの位生きられますか?」
「長くて一年、短くても半年でしょう。」
「そうですか・・」
医師から余命宣告をされ、海斗は子供達と共に過ごす時間を増やした。
「お母様、今日は勿忘草を摘んで来たよ!」
「ありがとう。」
「お母様は、わたしの事を忘れないでいてくれる?」
「忘れないよ。だからユーリアも、俺の事を忘れないでいてくれる?」
「うん、忘れないよ!」
「ありがとう。」
クリスマス・シーズンを迎え、海斗はもう寝台から起き上がれない程、弱っていた。
「お父様、サンタさん、うちにも来てくれるかなぁ?」
「あぁ、きっと来るさ。」
クリスマス=イヴ、ロンドンは大雪に見舞われた。
「うわぁ、雪だ!」
「二人共、気をつけろよ!」
ナイジェルがジェフリーとユーリアを連れ、凍ったテムズ川でスケートを楽しんでいると、ジェフリーが何処か暗い表情を浮かべながら彼らの元へとやって来た。
「ナイジェル、カイトが・・」
ナイジェル達が屋敷に戻ると、海斗は寝室で苦しそうに息を吐いていた。
「お母様!」
「ユーリア、お兄様と仲良くね。ジェフリー、ユーリアを頼むわね。」
「うん・・」
「二人共、わたしを忘れないで。」
家族に静かに見送られ、海斗は息を引き取った。
(カイト、子供達の事は俺に任せて、安らかに眠ってくれ・・)
毎年春になると、子供達は海斗の墓に勿忘草を供えた。
ジェフリーは、生涯独身を貫き、子供達を育て上げた。
幾度も季節が巡り、ジェフリーは病に倒れ、最期の時を迎えようとしていた。
「お父様、しっかりして!」
「カイト、迎えに来てくれたのか・・」
ジェフリーはそう言ってユーリアとジェフリーに優しく微笑むと、静かに息を引き取った。
「お父様も、逝ってしまわれたわね・・」
「あぁ・・」
父を見送った後、ユーリアとジェフリーは父の葬儀を終え、彼の遺品を整理した。
二人は父の遺品の中からアルバムを取り出し、それを開いた。
すると、そこには新婚時代から海斗が亡くなるまでの膨大な家族写真と、ジェフリーと海斗の書き込みがあった。
「二人共、幸せそう・・」
「そうだな・・」
アルバムの最後のページには、こう書かれてあった。
『わたしを忘れないで』
「何でだろう、涙が・・」
「なぁ、ユーリア、この屋敷はどうする?」
「残しましょう。」
二人を、忘れない為に―
―FIN-
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