素材は、
ヨシュケイ様からお借りしました。
「薄桜鬼」「火宵の月」の二次創作小説です。
作者様・出版社様・制作会社様とは関係ありません。
土方さんが両性具有です、苦手な方はご注意ください。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「入内なんて、どうして・・」
「何を言う!入内し、帝の目に留まれば、この家が繁栄する事間違いなしだ!」
義高は一方的に火月の入内を決めてしまった。
「僕、入内なんてしたくない。」
「そんな事をおっしゃらないで、もう決まった事なのですから。」
火月の乳母・あけびは、そう言って主を宥めた。
「今、後宮では妖騒ぎが起きているのですって。そのような恐ろしい場所に何故姫様を・・」
「お館様は一体、何をお考えなのかしら?」
高原家の女房達の噂話を聞きながら、有匡は後宮の騒ぎが未だに治まっていない事を知った。
(後宮の妖騒ぎの原因は何だ?)
「失礼致します、お館様。土御門家の方がいらしております。」
「土御門家の者が我が家に何の用だ?」
土御門家といえば、安倍家と共に陰陽道の大家として名高いが、そんな家の者がうちに何の用だろうか―義高はそう思いながらも、有匡の従兄達と会った。
「これはこれは、大したおもてなしも出来ずに申し訳ありません。」
「いいえ。こちらこそ突然伺ってしまい、申し訳ありません。実はこちらに、我らの従弟と瓜二つの顔をした女房が居るという噂を聞きましてね。」
「あなた方の従弟・・あぁ、陰陽師として名高い土御門有匡様ですか。いやぁ、そのような方に似た女房など我が家には居りませんね。」
「しかし・・」
「申し訳ありませんが、娘が近々入内を控えていましてね、色々と忙しいのですよ。どうぞ、お引き取り下さい。」
「は、はぁ・・」
有匡の従兄達を追い払った後、義高は火月の元へと向かった。
「お館様、火月様は・・」
「有匡殿、先程あなたの従兄達があなたに会わせろとしつこく言って来ましたよ。」
義高はそう言うと笑った。
「そうですか・・」
「ここへわたしが来たのは、あなたにお願いがあるからです。」
「お願い、とは?」
「火月を、どうか守ってやってください。」
「一体、どういう事なのでしょうか?」
「実は・・火月は命を狙われているのです。彼女を入内させるのは、彼女の命を狙う輩から守る為です。」
「わかりました。」
有匡は義高から火月が抱えている事情を知り、彼女を守る事を彼に誓った。
そして、火月が入内する日を迎えた。
「“有子”、くれぐれも火月の事を宜しく頼むぞ。」
「はい、お館様。」
入内した火月は、藤壺女御・爽子の元に仕える事になった。
「まぁ有子、無事で良かったわ。急に姿を消したから、心配していたのよ。」
「女御様、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。」
「そちらの方が、あなたの新しい主?」
「はい、そうなりますね。」
「あなたは素直でいいわね。そういうところが好きよ。」
「女御様、火月と申します。」
「美しい髪と瞳だこと。生まれつきなの?」
「はい。」
「これからよろしくね、火月。」
「こちらこそ宜しくお願い致します、女御様。」
有匡は、義高から火月の入内前に、ある物を預かっていた。
それは、火月の命を狙おうとしている者の名が書いた紙だった。
そこには、ある人物の名が書かれていた。
(厄介な事になるな・・)
「先生、こんな所に居たんですね。」
「火月様、ここではわたしの事を“有子”と呼んで下さい。」
「あ、ごめんなさい・・女御様が、管弦の宴を今宵開きたいと・・」
「わかりました。それで、楽器は何を?」
「和琴を・・」
「では、わたしも同じ楽器を・・」
「僕、先生の事が好きです。」
「え?」
突然火月から告白され、有匡は動揺してしまった。
「あ、ごめんなさい、忘れて下さい!」
火月はそう言うと、有匡の前から去っていった。
(変な奴だな・・)
「弘徽殿女御様、藤壺女御様付の女房が藤壺に戻って来たのですって。」
「まぁ、それは本当なの?」
「はい。一月前に姿を晦ましたと思ったら、無事に戻って来ました。」
「神隠しに遭って無傷で戻って来るなんて、珍しいわね。一度、その者に会ってみたいわ。」
弘徽殿女御・彩子は、そう言うと笑った。
火月が入内した日の夜、藤壺で管弦の宴が開かれた。
火月は緊張の余り、和琴を演奏中に弦を切ってしまった。
「申し訳ございません、女御様。」
「いいのよ。それよりも有子、よく無傷で戻って来てくれたわね。」
爽子はそう言うと、檜扇で顔を扇いだ。
「教えて頂戴、どうやって神隠しに遭って、無傷で帰って来たの?」
「土方家の宴に出席した際、ある男に襲われそうになり、身を隠していた時に、火月様に匿って頂きました。」
「まぁ、そうなの。」
「女御様、主上がお渡りになられます!」
「まぁ、主上が・・」
「珍しいこと。」
衣擦れの音を立てながら、帝が藤壺へとやって来た。
「主上、お珍しいですわね、こちらにお渡りになられるなんて。いつも弘徽殿の方に入り浸っておられると聞きましたが?」
「はは、痛い所を突くな。」
帝はそう言うと、爽子の傍に居る火月を見た。
「そなた、見ない顔だな?名は?」
「高原火月と申します。」
「火月か・・気に入ったぞ。」
「え・・」
火月は、主の爽子を差し置いて、帝に抱かれる事になってしまった。
「女御様、僕は・・」
「無事に、お務めを果たしなさい。」
「はい・・」
火月は、帝に抱かれる前に、有匡に会おうと思い、有匡が居る局へと向かった。
「先生・・」
「まぁ、どうなさったのです?」
「僕を、抱いて下さい・・」
「一体、何を・・」
火月は、有匡に抱きついた。
「僕は、先生以外の子供を産みたくありません!だから・・」
「わかった、わかったから、もう喋るな。」
有匡は、そう言うと火月の唇を塞いだ。
火月は、有匡の腕の中で蕩けた。
「主上、どうかなさいましたか?」
「いいや、風に乗って男女が睦み合う声が聞こえたような気がしたが、気の所為か。」
「ええ、そうでしょうとも。」
爽子は、そう言うと帝に抱きついた。
「お母様、何故お父様はあの子ばかり可愛がるの!?」
茜は、正室の娘でありながら、父が側室の娘である火月ばかりを溺愛しているのが気に喰わなかった。
火月は自分より美人で明るく、誰からも好かれている。
(卑しい身分の癖に、わたしより幸せになるなんて許せない!)
「落ち着きなさい、茜。わたくしが何とかしてあげるわ。」
倫子は、そう言うと茜を抱き締めた。
帝が火月を“抱いて”から、二月が経った。
「火月、火月?」
「申し訳ありません、女御様。少し、眩暈が・・」
火月はそう言うと、倒れてしまった。
「火月。」
「先‥生・・?」
「有匡様、わたくしに黙って火月と懇ろになるなんて酷いわ。」
「藤壺女御様、いつからわたしの正体を・・」
「あなたが土方家の若様と後宮へ潜入した時から気づいていましたわ。」
爽子は、そう言うと笑った。
「あの、僕・・」
「貧血で倒れてしまったのよ。まぁ無理もないわね、双子を身籠っているのだから。」
「え・・」
「あら、気づかなかったの?」
火月の妊娠を知った義高は、喜びの余り涙を流したが、土御門家の反応は冷ややかなものだった。
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