※BGMと共にお楽しみください。
土方さんが両性具有です、苦手な方はお読みにならないでください。
「何だと・・まだ百合乃がお座敷から戻って来ていない!?それは、確かなのか!?」
「へぇ、昼過ぎにここを出てから、こないな時間になっても帰ってけぇへんのどす。いつもお座敷が終わったらまっすぐうちに帰って来る子が・・」
久はそう言うと、不安そうな顔をして桂を見た。
「今朝、百合乃ちゃん宛に脅迫状が届いたんどす。」
「脅迫状が?」
「へぇ、“必ずお前を殺す”と書かれてました。桂様、どうか・・」
「心配しないでくれ、必ずわたしが百合乃を見つけてみせる。」
「おおきに。」
久はそう言うと、桂に向かって頭を下げた。
(何処に行ってしまったんだ、真紀!?)
久蔵から出た桂は、そう思いながら闇の中へと駆けていった。
桂と入れ違いに、歳三とあいりが久蔵へと向かうと、そこの女将が彼らの顔を見るなり、二人の方へと駆け寄って来た。
「新選組の土方様、どうか百合乃ちゃんを助けておくれやす!」
「あぁ、わかった。女将さん、百合乃に脅迫状を出した人間に心当たりはねぇか?」
「そういえば、前にお座敷でお客様にしつこく言い寄られていたと、百合乃ちゃんが珍しく愚痴をこぼしてはったわ。」
「その客の名前は?」
「確か、榎本様という方どしたなぁ・・」
(榎本・・確か、前に一度会合で顔を合わせたような気がするな・・)
「土方様?」
「女将、ありがとうよ。」
桂と歳三達が真紀を探している頃、当の本人は、人里離れた屋敷に囚われていた。
「う・・」
「目が覚めたか?」
真紀が目を開けると、そこには下卑た笑みを浮かべながら自分を見つめている数人の男達の姿があった。
「俺の事を覚えているか、百合乃?」
「あぁ・・確かわたしにしつこく付きまとって、女将さんに塩を撒かれた方ですね?」
「あれは、お前が悪いのだ、俺に・・」
「それで、こうしてわたしをこんな所に閉じ込めて手籠めにでもするつもりですか?」
真紀がそう言って男を見ると、彼は真紀の頬を殴った。
「何だその目は、俺を馬鹿にしているのか!?」
「榎本、こんな女、少し痛い目に遭わせてやれば、黙って言う事を聞くさ。」
「そうだ!」
男達の言葉を聞いた真紀は、口元に薄笑いを浮かべた。
「何がおかしい!」
「わたしは誰の支配も受けない。わたしを支配できるのはわたしだけ。」
「おのれ!」
「殴りたければ殴ればいい。」
榎本は真紀の言葉に激昂し、何度も拳を真紀の顔に振り下ろした。
「お前など、滅茶苦茶にしてやる!」
榎本の言葉を聞いた後、真紀は意識を失った。
「あそこだ。」
歳三が漸く真紀の監禁場所を突き止めたのは、もうすぐ夜が開けようとしている頃だった。
「本当に、あそこに兄上が?」
「待て、暫く様子を見てから踏み込んだ方がいい。」
急いで屋敷の中に入ろうするあいりを制し、歳三は彼女と共に近くの茂みに身を隠し、敵の様子を探る事にした。
「何だ、こいつ、死んだのか?」
「まぁ、あんなに可愛がってやった後だ、当然だろ。」
「その辺に捨てておくのは惜しいし、何処かの遊郭にでも売り飛ばすか?」
「そりゃぁいい・・」
男達の一人がそう言いながら部屋の隅に倒れたまま動かない真紀に近づくと、彼は両目を押さえながら悲鳴を上げた。
「こいつ!」
「あの程度で、わたしが殺せるとでも?」
真紀はそう言うと、倒れた男を足蹴にした。
彼の顔は赤紫色に痛々しく腫れ上がり、唇は切れて血が滲んでいた。
屋敷の中では、暫く男達の怒号や悲鳴が聞こえた。
「兄上、ご無事ですか?」
「あいり、どうしてこんな所に・・」
「兄上、どうしてこんな・・」
あいりは真紀の顔に残る痛々しい痣を見た途端、涙が止まらなくなった。
「あいり、俺は大丈夫だから泣くな。」
「兄上~!」
真紀が子供のように泣きじゃくるあいりの頭を撫でてなだめる姿を歳三が見ていると、そこへ桂がやって来た。
「真紀、無事か!?」
「桂さん・・」
「お前をこんな風にした奴らは誰だ?」
「安心して下さい、そいつらは皆俺が殺しました。それよりも、どうして桂さんがここに?」
「君達の後をつけたのさ。」
桂はそう言うと、歳三達を見た後、真紀を抱き締めた。
「本当に、無事で良かった。」
「桂さん・・」
真紀は桂の姿を見て安心したのか、そのまま気を失った。
「兄上!」
「大丈夫、彼は気を失っているだけだ。」
桂はそう言うと、気絶している真紀を優しく横抱きにした。
「君達はもう帰りたまえ。真紀はわたしが連れて帰る。」
「そうか・・」
「土方様、うちらはもう・・」
あいりに促され、歳三は屋敷から出た。
(真紀、これらかはわたしがお前を守る。)
「桂はん、この子は?」
「あぁ・・この子はわたしの恋人だ。彼女は怪我をしているから、医者を呼んでくれないか?」
「へ、へぇ・・」
宿の女将はそう言うと、町医者を呼びに行った。
「う・・」
「真紀、大丈夫だ、わたしがついている。」
桂はそう言うと、真紀の髪を優しく梳いた。
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