「何か焦げくさくないですか?」
「そうかなぁ?」
昼休み、総司が同僚達とカフェテリアで昼食を食べていると、突然サイレンが鳴り響いた。
「三階の特別室が燃えてるぞ!」
「早く外に避難しろ!」
総司達病院スタッフは、入院患者達をすぐさま外に避難させた。
「沖田先輩、土方さんが居ません!」
「もしかして、まだ特別室に居るんじゃ・・」
千尋と総司が特別室に入ると、そこには炎の中で蹲(うずくま)ったまま動かない歳三の姿があった。
「土方さん、わかりますか?」
「・・うるせぇな・・」
千尋が歳三の身体を揺さ振ると、彼は低い声で呻いて目を開けた。
「立てますか?」
「俺はもうここで死ぬ。」
「何を言ってるんですか!?」
「もう、生きてたって仕方ねぇんだ・・俺みたいな人間は、死んだ方がいいに決まってる・・」
歳三がそう言った瞬間、彼は千尋に頬を張られた。
「馬鹿な事言わないでください!息子さんに会いたくないんですか!?」
(陸・・)
歳三の脳裡に、息子の笑顔が浮かんだ。
もう二度と会う事もないだろうが、息子を残して死ねない。
ふと周りを見ると、病室は炎に包まれ、今にも歳三と千尋に向かってきようとしている。
「行きますよ、さぁ!」
千尋に身体を支えて貰いながら、歳三は病室から脱出した。
一方、外では病院スタッフたちや入院患者達が炎に包まれていく病院を為すすべなく見守っていた。
(遅いな、千尋ちゃん・・まさか、間に合わなかったとか・・)
総司が最悪の事態を思った時、黒煙の中から二つの人影が見えた。
それは千尋と、歳三だった。
「千尋ちゃん、大丈夫なの?」
「はい・・でも土方さんが、先程から苦しそうで・・」
総司が歳三を見ると、彼は顔を青白くさせながら地面に倒れ込んでしまった。
「土方さん、ちょっと失礼しますね。」
彼は歳三の前に跪き、彼の口に熱傷があることに気づいた。
「千尋ちゃん、今すぐ先生呼んで来て!」
「沖田先輩、一体何が・・」
「土方さんは気道熱傷を起こしているかもしれない。急がないと手遅れになるよ!」
「はい!」
千尋は医師を呼ぶ為、一目散に駆けだした。
「気道を確保するから、患者を上へ向かせろ!」
「はい!」
医師が駆けつけた時には、歳三の顔は土気色になりつつあった。
「近くの病院に搬送しろ!」
「わかりました!」
千尋達は歳三を、片道10分かかる病院へと搬送した。
だが、彼らが予測できない事態が起こった。
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