千尋に連れて行かれた場所は、一見すると銀座にありそうな高級クラブのようだった。
「これが、お前が連れて行きたかった場所か?」
歳三がそう千尋に尋ねると、彼女は口端を歪めて笑った。
「入れば、解るわよ。」
千尋とともに店内へと入ると、そこには豪華なシャンデリアが輝き、18世紀末フランス宮廷を思わせるかのようなロココ様式の豪華なソファやテーブルが置かれており、中央にはグランドピアノが漆黒の輝きを放っていた。
「マダム、お帰りなさいませ。」
店の奥から、ダークグレーのスーツを纏った男性が現れた。
「ただいま。こちらは誠心会病院外科部長の、土方さんよ。これから彼にお店を案内するから、女の子達をお願いね。」
「はい。」
「さぁあなた、行きましょうか。」
ヒールの音を響かせながら、千尋は店の奥へと進んだ。
「ここは表向きは高級クラブになっているけれど、実は違う目的の為にこの店を作ったのよ。」
「ある目的、だと?」
「ええ。」
千尋は螺旋階段を上がり、とある扉の前へと立った。
彼女が扉を開けると、そこには驚きの光景が広がっていた。
部屋の中には半裸や全裸の男女がまぐわっていた。
「ここは?」
「見て解らない? 高級娼館よ。お客さんは政財界の著名人や代議士、芸能人・・ありとあらゆるジャンルの方々が癒しを求めに来るところなのよ。」
オフィスに入った千尋はそう言ってソファに座ると、ゆっくりと足を組んだ。
「お前、一体何をしたいんだ?」
「何って、お金儲けよ。代議士の妻なんか退屈で、やってられないのよ。」
千尋は煙草の煙を歳三に吹きかけると、そっと彼の股間に手を這わせた。
「やめろ。」
「あら、どうして? 香帆っていう女とはするのに、あたしとはしたくないわけ?」
「お前・・」
香帆との関係を千尋が知っていることに、歳三は驚愕の表情を浮かべて彼女を見た。
「あの子、昔からあなたの事好きだったんでしょう? わたくしという邪魔ものがいなくなって、箍が外れてあなたとの関係に溺れているんじゃないかと思ったけど、やっぱりね。」
千尋はスマートフォンを取り出すと、ある動画を再生した。
『んぁぁ、またイク、イグのぉぉ~!』
白目を剥き、髪を振り乱しながら理性を失った香帆が絶頂に達し、その陰部に容赦なく自分のものを打ちつけている歳三の姿がそこにはあった。
香帆の陰部から愛液と歳三の体液が溢れ、彼女の秘肉がヒクヒクと痙攣しているところがクローズアップされ、最後にはベッドにうつ伏せになった歳三の姿が映っていた。
「あなたは相変わらず、ベッドの中ではモンスターなのね。」
「どうするつもりだ、それ?」
「さぁ? あなたがわたくしの要求を呑んでくれたら、これをネットに流すのを止めるわ。」
「お前の要求は何だ?」
「ある先生の外科手術を、あなたに担当して欲しいのよ。」
千尋はそう言うと、一枚の書類を歳三に渡した。
そこに書かれていたのは、最近不正献金疑惑で何かとマスコミに取りざたされている代議士・吉田稔麿の名があった。
「吉田先生は心臓がお悪くてね、あなたに是非手術をして欲しいとおっしゃっておられるの。やってくれるわよね、あなた?」
「冗談じゃねぇ、何でこんな奴を・・」
「どんな患者でも受け入れるのが、医師の仕事なのでしょう?」
千尋がそう言って笑った時、不意にオフィスのドアが開いた。
「話は済んだかね、マダム?」
そこには漆黒の髪をなびかせ、切れ長の瞳をした吉田稔麿が立っていた。
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Last updated
Apr 6, 2012 08:46:15 AM
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