「そんな・・それは本当なの、お父様?」
「ああ。」
「もう、歳介さんとはやり直せないのね?」
病院で療養中の佳織は、父から潔子の死と、彼女が起こした事件を知った。
「佳織、もう歳介君を解放してやれ。」
「わかったわ・・」
佳織はそう言うと、俯いた。
数日後、歳介の元に佳織の署名・捺印がされた離婚届が郵送されてきた。
「これで、けじめがついたね。」
「ああ。親権については、後日双方の弁護士を交えて話し合うつもりだ。」
「そうか・・まぁ、盆休みが終わったら、また寂しくなるな。」
亮輔はそうこぼすと、肩を落とした。
佳織との離婚への手続きがスムーズに進んでいるとはいえ、興輔が今の学校から東京の学校へと転校をするのは変わらなかった。
「ねぇお父さん、どうして京都に戻るの?」
「俺はお前の母さんと別れることを決めた。だから、お前ぇは好きな子に自分の気持ちを伝えろ、いいな?」
「わかった!」
盆休みが終わり、歳介は興輔を連れて京都へと戻った。
「あなた、興輔の親権はあなたに譲ります。今まであなたにした事を振り返ると、あなたにわたしは酷い事ばかりしてきたわね・・」
「佳織・・」
「わたしは、もうあなたを自分の我がままで振り回すのは止めます。わたしが早くあなたとの離婚に踏み切っていたら、興輔が誘拐される事も、潔子さんが自殺する程の罪を犯す事もなかったでしょう・・」
JR京都駅前にあるホテルのカフェで、佳織はそう言って歳介を見るとコーヒーを一口飲んだ。
「後悔しないのか?」
「いいえ。わたしはもう、あなたに執着しません。潔子さんは、自分の命を以ってわたしがおかしなことをしないようにしてくれたんです。彼女の気持ちに、わたしは報いねばなりません。もう、二度と興輔にも、あなたにもお会いする事はないでyそう、お元気で。」
「ああ、元気でな・・」
カフェから去って行く佳織の後を、歳介は追わなかった。
こうして、7年間にも及ぶ佳織との結婚生活を、歳介は無事にピリオドを打った。
「真那美ちゃん、今いい?」
「いいよ、どうしたの興ちゃん?」
興輔は真那美が通っている日舞教室で彼女が出て来るのを見た彼は、そう言って真那美を人気のない所へと連れ出した。
「あのね、僕真那美ちゃんの事が好きなんだ。付き合ってくれる?」
「ごめんなさい・・わたし、興ちゃんの事は友達として付き合いたいと思っているの。」
「そう。あのね、僕お父さんと一緒に東京に行く事になったんだ。だから、学校も向こうの学校に転校することになったの。」
「じゃぁ、会えないね。」
「でも、毎日メール出来るでしょう?だから寂しくないよ。ごめんね、話はそれだけ。」
「始業式には来るんでしょ?」
「うん・・」
「じゃぁ、また新学期にね!」
興輔は晴れやかな顔で真那美と別れると、歳介が待つホテルへと戻った。
「ただいま。」
「どうだった?ちゃんと真那美ちゃんに、自分の気持ち伝えられたか?」
「うん。」
「そうか、良かったな興輔。」
二学期の始業式が始まり、興輔は久しぶりに聖愛学園の制服に袖を通した。
「真那美ちゃん、おはよう。」
「興ちゃん、おはよう。」
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Last updated
2013年09月05日 14時13分34秒
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