表紙は、
てんぱる様からお借りしました。
「天上の愛地上の恋」二次小説です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。
「やだっ!」
ルドルフはそう叫ぶと、アルフレートが羽織らせてくれたコートを脱いだ。
「帰りますよっ!」
「やだっ!」
「もう、いい加減にして下さい!」
「や~!」
突然愚図り始めたルドルフに手を焼いているアルフレートの姿を、コンラートとクラウスは呆然と見つめていた。
「なぁ、あれ・・」
「赤の他人の振りをしようぜ。」
コンラートがそう言った時、ルドルフと目が合ってしまった。
「アルフレートは、ルーディのものなの!」
「ルドルフ様・・」
「だからお前には渡さないもんね~!」
「もうお休みの時間ですよ~!」
アルフレートはそう言いながら手刀をルドルフの首に打ち込み彼を気絶させると、手際よく迎えに車に乗せて去っていった。
「なんつーか、慣れていやがるな・・」
コンラートがそう言いながらレジで飲み代を払おうとしたところ、店員から彼はこう言われた。
「先程のお客様が、皆様の分までお払いになられました。」
「え、マジかよ・・」
(あいつの経済力パネェな・・)
翌日、アルフレートは大学を休んだ。
「アルフレート、どうしちまったのかなぁ?」
「さぁな。」
「コンラート、何か知っているのか?」
「まぁ、知ってなくもないけどね。」
大学内でコンラートがそんな話を友人達と話していると、そこへルドルフがやって来た。
「お前、コンラート=ビューイングだな?」
「そうだが・・俺に何か用か?」
「昨夜の事、何も話していないだろうな?」
「ああ・・」
「そうか、ならいい。」
ルドルフはそう言うと、コンラートに背を向けて去っていった。
「何だあいつ!?」
「確か経済学部の、あの一年・・」
「おっかねぇ~!」
(わざわざ“俺のモノ”アピールとはねぇ・・昔より相当拗らせてんなぁ、あいつ。)
折角平和な世界に転生して、人生を謳歌すると決めたので、 コンラートは余りあの二人に関わらないようにしようと思った。
しかし―
「は、執事喫茶?」
「そうなのよぉ~、今度の学園祭でね、執事喫茶をやる事になってね、あなたに出て貰おうかなって思っているの!」
アルフレートの友人・テオドールの恋人・エミーからそう言われ、コンラートは即座に断った。
「ねぇコンラート、この前の試験の時、わたしあなたにノートを見せたわよね?」
「あ、あぁ・・」
「その時、“ちゃんと借りは返す”って言ったわよね?ね?」
「あ~もうわかったよ!やりゃぁいいんだろ、やりゃぁ!」
「話がわかる人で良かったわぁ~!」
(何か嫌な予感がするんだよなぁ・・)
コンラートがそんな事を思いながら図書館に入ると、奥の席から鋭い視線を感じた。
その視線が誰のものか見なくてもわかったので、コンラートは頭をボリボリと掻きながら図書館から出て、カフェへと向かった。
「コンラート、どうしたんだ?」
「いやぁ、あのお坊ちゃんに目の敵にされちまった。俺は何もしてねぇってのに。」
コンラートがそう言いながらラップトップのキーボードを叩いていると、彼のスマートフォンが鳴った。
「はぁ・・」
「どうした?」
「エミーが、衣装合わせするから来てくれだと。今日はとんだ厄日だぜ。」
コンラートはそう言うと、ラップトップを鞄の中に入れ、カフェから出て教育学部がある建物へと向かった。
「あら、来てくれたのね。」
「まぁ、頼まれたから来てやっただけだ。それよりもエミー、ひとつ聞いてもいいか?」
「なぁに?」
「何で、ハプスブルク家の坊ちゃんが居るんだよ!?」
「だって、この人は執事喫茶のオーナーだもの。」
「オーナー?」
「わたしの執事が世話になるのだから、金位出して当然だろう?」
そう言ったルドルフは、今にもコンラートを射殺さんばかりの鋭い視線をコンラートに送った。
「あのなぁ、あんた朝から俺に突っかかってくるけど、俺ぁあんたの恋人には全く興味はねぇからな。」
「そうか、ならいい。」
ルドルフはそう言うと、コンラートに背を向けて部屋から出て行った。
「コンラート、あの人と知り合いなの?」
「ま、まぁ、ちょっとな・・」
「すいません、遅れましたっ!」
「アルフレート、さっきルドルフ様がこちらにいらしていたわよ。あら、あなたルドルフ様と同じ香水をつけているの?白百合の良い香りがするわ。」
「えっ、あの、これは・・」
(マーキングかよ・・独占欲が強過ぎやしねぇか?まぁ、アルフレートが男で良かったぜ。)
「さてと、まずは服装からね。コンラート、これに着替えて頂戴。」
エミーがそう言ってコンラートに手渡したのは、燕尾服だった。
「おいおい、何で燕尾服なんだよっ!」
「え~、執事といえば燕尾服でしょう?そうよね、アルフレート?」
「燕尾服はお屋敷の中でだけ着用します。それ以外は皆さんスーツを着ています。」
「へぇ~、そうなに、知らなかったわぁ。」
「まぁ、誘拐や脅迫のリスクが常にありますから、燕尾服は目立ちます。でも、執事といえば燕尾服のイメージですよね。わたしも向こうで着替えて来ますね。」
そう言ったアルフレートは衝立の向こうへと消えた。
「それじゃ、俺も!」
コンラートがそう言ってアルフレートの後を追うと、彼は着替えている所だった。
「あ、すまねぇ。」
「大丈夫、もうすぐ終わるから。」
アルフレートの首筋に残る噛み痕を見たコンラートは、彼が何故衣装合わせの時間に遅れたのかがわかったような気がした。
「アルフレート、あの坊っちゃんは嫉妬深いんだな。あいつ朝から俺にあんたとの関係を勘繰って来たぞ。」
「あの方は、わたしの事を放っておけないから・・」
「なぁにモラハラ被害者みたいな事を言ってんだよ。ま、俺はあんたがどうなろうが知ったこっちゃないね。」
コンラートはそう言うと、着替えを終えて衝立の中から出た。
「へぇ、そんな事があったのか・・」
「はぁ~、これからあの二人と毎日顔を合わせるとなると憂鬱になるぜ。」
「まぁ、俺も執事喫茶に出るから、お互い頑張ろうぜ。」
「あぁ。」
「じゃ、俺バイトだから。」
「またな~!」
カフェの前でコンラートと別れたクラウスは、アルバイト先のカフェへと向かった。
「いらっしゃいませ。」
「ホットコーヒーをひとつ。」
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